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この記事でわかること
本症例の概要:胸膜播種を伴う胸腺がんステージ4の53歳男性が、抗がん剤と治験薬のあとに抗がん剤を再開し、続けて樹状細胞ワクチン療法を開始。CTでがんの縮小がみられ半年間は抗がん剤を休止。再増大にはレジメンを変更し、現在はがんの縮小と腫瘍マーカーSCCの低下を確認しながら、元気に外来へ通院されています。
胸腺は、胸の中央、胸骨の裏側にある免疫の臓器です。胸腺にできる腫瘍のうち、胸腺腫は比較的おとなしい経過をとることが多いのに対し、胸腺がんは増殖が速く、周囲の臓器や胸膜に広がりやすい、まれな悪性腫瘍です。年間の発生数が少ないため、大規模な臨床試験が組みにくく、標準治療の根拠が他のがんに比べて限られています。
胸腺がんが胸膜(肺を包む膜)に散らばった状態を胸膜播種といい、正岡分類ではステージ4に相当します。この段階では手術で取りきることは難しく、薬物療法が中心になります。本症例も、胸の痛みをきっかけに健康診断で精査したところ、胸膜播種を伴うステージ4と診断されました。
| CT・MRI | 腫瘍の大きさ、周囲の臓器への浸潤、胸膜播種や胸水の有無を調べ、治療の効果判定にも使います。 |
|---|---|
| PET-CT | 離れた臓器への転移の有無を調べます。 |
| 生検 | 組織を採り、胸腺腫と胸腺がんを区別します。扁平上皮がんタイプが最も多くみられます。 |
| 腫瘍マーカー(SCC) | 扁平上皮がんタイプの胸腺がんではSCC抗原が上昇することがあり、経過の目安になります。本症例でも指標として使いました。 |
| 一次治療 | カルボプラチンとパクリタキセル(アブラキサンを含む)の組み合わせが広く用いられます。本症例もこの組み合わせから治療を始めました。 |
|---|---|
| 二次治療以降 | 分子標的薬のレンバチニブ(国内承認あり)や、S-1、プラチナ製剤とアムルビシンの組み合わせなどを検討します。治験に参加する選択肢もあります。 |
| 薬を休む期間 | がんが縮小し安定している間は、抗がん剤を休止して経過観察に入ることがあります。再増大したときに次のレジメンへ移ります。 |
| 症状をやわらげる治療 | 胸水のドレナージ、痛みへの放射線や鎮痛薬などを並行して行います。 |
胸腺がんは治療の選択肢が限られ、抗がん剤を切り替えながら病勢をコントロールしていく経過になりがちです。当グループでは、抗がん剤を土台に、免疫を活性化する〈アクセル〉として樹状細胞ワクチン療法を組み合わせ、抗がん剤を休んでいる間も免疫でがんを抑えることを目指します。状態に応じて免疫チェックポイント阻害薬や放射線を組み合わせる独自のプロトコルSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に設計します。
抗がん剤の「効いている期間」を延ばし、休薬の期間をつくることが、体力と生活の質を守ることにつながると私たちは考えています。本記事の症例は、その考え方で経過をみている一例です。
できます。当グループでは胸腺がんの患者さんの治療経験があります。胸腺がんは標準治療の根拠が限られているぶん、抗がん剤に免疫療法を組み合わせる設計を個別に検討します。
本症例も治験終了後に抗がん剤を再開し、続けて樹状細胞ワクチン療法を開始しました。これまでの治療歴と検査結果をうかがったうえで、検討できる選択肢をご説明します。
できます。当グループでは抗がん剤を土台に樹状細胞ワクチン療法を組み合わせることが多く、本症例も抗がん剤の再開に続けて免疫療法を開始しました。
扁平上皮がんタイプの胸腺がんではSCC抗原が経過の目安になります。本症例では、CTでの縮小とあわせてSCCの低下を確認しています。治療効果には個人差があります。
Case Report ─ 当院の改善症例
重要症例
この症例のポイント
ここまで、まれながんである胸腺がんの治療の選択肢を整理しました。当グループでは、抗がん剤に樹状細胞ワクチン療法を組み合わせ、休薬の期間をつくりながら病勢をコントロールしている患者さんを経験しています。実際の経過をご紹介します。
| 患者さま | 53歳 男性 |
|---|---|
| 診断名 | 胸腺がん |
| ステージ | 4(胸膜播種) |
| 標準治療 | カルボプラチン+アブラキサン、治験(レンバチニブ)、シスプラチン+カルセド |
| 治療内容 | 樹状細胞ワクチン療法(4か月・7回) |
| 治療費 | 料金表ページをご覧ください。 |
| 診断 | 胸の痛みがあり、健康診断で精査したところ胸腺がんのステージ4(胸膜播種)と診断 |
|---|---|
| 一次治療 | 同年に抗がん剤(カルボプラチン+アブラキサン)を開始。4クールでがんの縮小がみられ経過観察 |
| 治験 | 腫瘍の増大がみられ治験に参加。3年間レンバチニブを内服するも、血液検査結果の悪化と胸水で治験終了 |
| 免疫療法開始 | 抗がん剤(カルボプラチン+アブラキサン)を再開し、続けて樹状細胞ワクチン療法を開始。CTでがんの縮小がみられ、半年間は抗がん剤をせず経過観察 |
| レジメン変更 | CTでやや増大傾向と診断され、抗がん剤をシスプラチン+カルセドへ変更 |
| 現在 | CTでがんは縮小。腫瘍マーカーのSCCも低下し、元気に外来へ通院中 |

当グループでは、標準治療(抗がん剤)を土台としつつ、プラスアルファで免疫の働きで後押ししていきます。進行がんでも免疫の働きを強化するために、患者さまの状況に応じて複合的に免疫を改善させる独自のプロトコルSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に免疫治療を設計します。
本症例では、標準治療としての抗がん剤(カルボプラチン+アブラキサン、のちにシスプラチン+カルセド)に、免疫を活性化する〈アクセル〉として樹状細胞ワクチン療法を組み合わせています。抗がん剤を休んでいる間も免疫でがんを抑え、休薬の期間をつくる設計です。
免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)では副作用が認められることはほとんどありませんが、未知の副作用等が起こる可能性は否定できません。主な副作用は以下のとおりです。
本症例は、胸膜播種を伴う胸腺がんステージ4に対し、抗がん剤と樹状細胞ワクチン療法を組み合わせてがんの縮小と腫瘍マーカーの低下がみられ、元気に外来へ通院されている一例です。ただし治療効果には個人差があり、すべての患者さんに同様の結果が得られるとは限りません。