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膵臓癌ステージⅣ(腹膜播種)で人工肛門をつくった70代後半の女性|抗がん剤と樹状細胞ワクチン療法を併用した経過

この症例のポイント

  • 相談時の状況:腹痛と便通の異常をきっかけに、膵臓癌(膵体部)と腹膜播種が見つかった70代後半の女性です。診断と同じ月に、腹膜播種による腸閉塞のため、人工肛門をつくる手術を受けられました。
  • 検討した課題:手術のあと、状態が落ち着いてから抗がん剤(GnP療法)が始まりました。その抗がん剤を続けながら、ほかに何を組み合わせられるかを検討しました。
  • 行った治療と経過:GnP療法を始めた翌月から、樹状細胞ワクチン療法を併用しました。その後、放射線治療(20回)も行いました。診断から12か月の時点で、腫瘍は縮小した状態を保っています。

膵臓癌の腹膜播種と言われ、
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    Case Report ─ 当院で治療を行った膵臓癌の症例

    膵臓癌70代女性ステージⅣ腹膜播種人工肛門造設後抗がん剤 GnP療法放射線治療樹状細胞ワクチン療法縮小を維持(診断から12か月時点)

    膵臓癌の腹膜播種で人工肛門をつくる手術のあと ― 抗がん剤と樹状細胞ワクチン療法を併用した経過

    腹痛と便通の異常から膵臓癌(膵臓がん)と腹膜播種が見つかり、人工肛門をつくる手術のあとに抗がん剤治療を始めた患者さまの経過をご紹介します。膵臓癌のステージや標準治療の解説は、症例のあとにまとめています。

    患者情報

    項目 内容
    診断名 膵臓癌(膵体部がん)・腹膜播種
    ステージ ステージⅣ
    年齢・性別 70代後半 女性
    発見の契機 腹痛、便秘と下痢の繰り返し
    手術・標準治療 人工肛門造設術(腹膜播種による腸閉塞に対して)、抗がん剤(GnP療法)、放射線治療(20回)
    当院での治療 樹状細胞ワクチン療法

    相談時の状況と、検討した課題

    腹痛と、便秘・下痢を繰り返す症状が2週間ほど続き、近くの医療機関を受診されました。処方を受けても改善せず、別の医療機関のCTで膵臓の腫瘍が疑われました。精密検査の結果、膵体部がん・腹膜播種と診断されました。

    同じ月に、腹膜播種によるS状結腸の閉塞(腸閉塞)が起こりました。このため、人工肛門をつくる手術を受けられました。

    術後の状態が落ち着いてから、抗がん剤のGnP療法が始まりました。GnP療法は、ゲムシタビン(商品名:ジェムザール®)とナブパクリタキセル(商品名:アブラキサン®)を併用する治療です。当院では、その治療を続けていただきながら、翌月から樹状細胞ワクチン療法を併用しました。

    治療経過

    時期 内容
    20XX年 腹痛と、便秘・下痢を繰り返す症状が2週間ほど続き受診。CTで膵臓の腫瘍が疑われ、精密検査で膵体部がん・腹膜播種と診断。
    同じ月 腹膜播種によるS状結腸の閉塞(大腸イレウス)のため、人工肛門造設術。
    診断から2か月後〜 術後の状態が安定し、抗がん剤(GnP療法)を開始。
    3か月後〜 当院で樹状細胞ワクチン療法を開始。同じ月のCTで、腫瘍の縮小を確認。
    7か月後 放射線治療(20回)。
    診断から12か月 抗がん剤と樹状細胞ワクチン療法を併用しながら通院。腫瘍は縮小した状態を保っている。

    3か月後のCTは、樹状細胞ワクチン療法を始めた月の検査です。抗がん剤(GnP療法)を始めて約1か月後にあたります。この時点の縮小を、樹状細胞ワクチン療法の効果とみることはできません。

    膵臓癌・腹膜播種の診断と人工肛門造設術のあと、診断から2か月後に抗がん剤(GnP療法)、3か月後に樹状細胞ワクチン療法を開始し、7か月後に放射線治療(20回)を行った、診断から12か月までの治療経過

    治療の考え方(SynerTri®)

    当グループでは、標準治療(抗がん剤)を土台としつつ、プラスアルファで免疫の働きで後押ししていきます。進行がんでも免疫の働きを強化するために、患者さまの状況に応じて複合的に免疫を改善させる独自のプロトコルSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に免疫治療を設計します。

    本症例では、標準治療としての抗がん剤(GnP療法)に、免疫を活性化することをねらう〈アクセル〉として、樹状細胞ワクチン療法を併用しました。経過の途中で、放射線治療(20回)も受けられています。

    治療期間・回数/費用

    樹状細胞ワクチン療法は、1セット(7回)を1つのクール(治療単位)として実施します。本療法は、最初のクールを終えたあとも治療を継続される方が多くいらっしゃいます。

    当院の治療はすべて自費診療(保険適用外)です。費用は改定される場合があるため、最新の金額は料金表をご確認ください。なお、クール終了後に治療を継続される場合は、別途費用がかかります。

    副作用・リスク

    樹状細胞ワクチン療法の副作用は基本的にほとんど認められませんが、以下の可能性があります。

    • 成分採血時:口の周り・手足のしびれ、倦怠感、吐き気(迷走神経反射)等
    • 細胞培養時:細菌等による培養汚染リスク
    • ワクチン接種時:注射部位の発赤・皮疹・発熱

    併用した抗がん剤(GnP療法)では、疲労、脱毛、吐き気、手足のしびれ(末梢神経障害)、貧血、白血球や血小板の減少、下痢などがみられることがあります。重い副作用として、骨髄抑制、感染症、間質性肺疾患などが報告されています。

    GnP療法の第Ⅲ相試験では、強い副作用(グレード3以上)が次の割合でみられました。好中球の減少38%、疲労17%、末梢神経障害17%です(Von Hoff ほか, N Engl J Med 2013)。副作用の出方には個人差があります。

    放射線治療の副作用は、照射する部位によって異なります。

    ※治療効果には個人差があり、すべての患者さまに同様の結果が得られるとは限りません。また、本症例で用いた治療には、国内の保険適応や大規模臨床試験で標準治療として確立されていないものも含まれます。実際の治療は、リスクとベネフィットを評価し、ご本人の同意のもとで設計します。

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      膵臓癌と腹膜播種 ― ステージⅣと診断されるとき

      膵臓癌は、胃の後ろにある膵臓にできるがんです。初期は症状が出にくい病気です。腹痛、背中の痛み、体重の減少、黄疸、便通の変化などをきっかけに見つかることがあります。

      腹膜播種は、がん細胞がおなかの内側をおおう膜(腹膜)に散らばった状態です。膵臓から離れた場所への転移にあたるため、腹膜播種があるとステージⅣと診断されます。進むと、腹水がたまる、腸の通りが悪くなる(腸閉塞)といった症状が出ることがあります。

      膵臓癌の治療の全体像は「膵臓がんの方へ」に、腹膜播種の治療の考え方は「腹膜播種の治療相談」にまとめています。

      腹膜播種で腸閉塞が起きたとき ― 人工肛門の手術と、そのあとの治療

      腹膜播種で腸が狭くなると、便やガスが通らなくなることがあります。これが腸閉塞です。食事がとれない状態が続くと、抗がん剤治療を始めることも難しくなります。

      このようなとき、便の出口をおなかの表面につくる手術(人工肛門造設術)が行われることがあります。目的は、腸の通り道を確保し、食事や次の治療につなげることです。手術のあと、全身の状態が落ち着いてから薬物療法を検討します。

      遠隔転移のある膵臓癌の標準治療 ― GnP療法とFOLFIRINOX療法

      腹膜播種など遠隔転移のある膵臓癌では、薬物療法が治療の中心になります。最初に行う薬物療法を、一次治療と呼びます。一次治療には、主にGnP療法(ゲムシタビンとナブパクリタキセルの併用)と、FOLFIRINOX療法が用いられます。

      どちらも、臨床試験でゲムシタビン単独より生存期間が長いことが示された治療です(Von Hoff ほか, N Engl J Med 2013/Conroy ほか, N Engl J Med 2011)。そのぶん、副作用は増えます。

      どちらを選ぶかは、年齢、全身の状態、副作用の出方などをふまえて決めます。全身の状態によっては、ゲムシタビン単独やS-1単独が選ばれることもあります。

      当グループでは、この標準治療を土台に、免疫の働きを後押しする樹状細胞ワクチン療法(SynerTri®のアクセル)を組み合わせる設計を検討することがあります。樹状細胞ワクチン療法は、患者さまご自身の樹状細胞を体外で培養してがんの目印を覚えさせ、体内に戻すことで、キラーT細胞にがんを攻撃させることを目指す治療です。標準治療に加えた場合の上乗せの効果は、大規模な臨床試験で確立されたものではありません。適するかどうかは、病状と体の状態をみて個別に判断します。

      よくある質問(FAQ)

      Q. 腹膜播種で人工肛門をつくったあとでも、抗がん剤治療や樹状細胞ワクチン療法は受けられますか?
      人工肛門をつくる手術のあと、全身の状態が落ち着けば、抗がん剤治療を始められることがあります。樹状細胞ワクチン療法を併用できるかどうかは、血液検査の結果や体の状態をみて判断します。本症例では、手術のあと状態が安定してから抗がん剤(GnP療法)が始まり、その翌月から樹状細胞ワクチン療法を併用しました。同じ進め方が適するかどうかは、お一人ごとに異なります。
      Q. 抗がん剤治療をすでに始めています。あとから樹状細胞ワクチン療法を加えることはできますか?
      抗がん剤治療の途中から樹状細胞ワクチン療法を併用することはあります。樹状細胞ワクチン療法では、はじめに成分採血でご本人の血液から細胞を集めます。そのため、抗がん剤の投与の日程や血液検査の結果をみながら、始める時期を決めます。主治医のもとでの治療を続けていただくことが前提です。併用による上乗せの効果は、大規模な臨床試験で確立されたものではありません。
      Q. 抗がん剤と樹状細胞ワクチン療法を併用した場合、どちらが効いたかは分かりますか?
      複数の治療を併用した場合、どの治療がどれだけ効いたかを、お一人の経過から分けて判断することはできません。本症例でも、樹状細胞ワクチン療法を始めた月のCTで腫瘍の縮小が確認されました。ただし、これは抗がん剤を始めて約1か月後の検査で、樹状細胞ワクチン療法の効果とみることはできません。画像や腫瘍マーカーの変化は、治療全体の経過として確認していきます。治療効果には個人差があります。

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        矢﨑雄一郎 プレシジョンクリニック東京院長
        監修:矢﨑 雄一郎 医師
        プレシジョンクリニック 東京院長 / 医療法人社団プレシジョンメディカルケア理事長
        東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、東京大学医科学研究所で免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の開発に従事。現在はプレシジョンメディカルケア理事長として活躍中。専門分野は免疫療法及び消化器外科。約6,000症例の免疫療法を主導し、進行がんにおける個別化免疫治療(SynerTri®)プロトコルを確立。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法(樹状細胞ワクチン)の開発企業であるテラ株式会社の創業者。

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