この症例のポイント
乳がんにはホルモン受容体(ER・PgR)とHER2タンパクの発現状態によって複数のサブタイプがあります。トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、ER・PgR・HER2のいずれも陰性であるサブタイプで、乳がん全体の約15〜20%を占めます。ホルモン療法も抗HER2療法(トラスツズマブなど)も効かないため、化学療法が治療の中心となります。
TNBCは進行が速く再発リスクが比較的高い一方、免疫原性が高い(免疫細胞の浸潤=TILsが多い)という特徴があります。この性質が免疫療法との相性の良さにつながります。
| 乳がんサブタイプ | 特徴・主な治療 |
|---|---|
| ルミナルA型(ER/PgR陽性・HER2陰性) | 最も多い。ホルモン療法が有効。予後良好。 |
| HER2陽性型 | 抗HER2療法(トラスツズマブ等)が有効。 |
| トリプルネガティブ(本症例) | ホルモン療法・抗HER2療法が使えない。化学療法+免疫療法を検討。 |
TNBCでステージ4(遠隔転移あり)の場合、根治を目指すことは難しく、化学療法による腫瘍制御と生活の質(QOL)の維持が主な目標となります。代表的な化学療法レジメンにはアンソラサイクリン系(FEC・AC)、タキサン系(パクリタキセル・ドセタキセル)などがあります。
近年では免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ)がPD-L1陽性TNBCの一次治療に承認され、免疫療法が標準治療の一角を担い始めています。孤立性肺転移では切除術(肺部分切除・上葉切除など)が選択される場合もあります。
乳がんの遠隔転移としては骨・肺・肝・脳が多いですが、孤立性(単発)の肺転移では外科的切除が根治または長期制御の手段となります。本症例でも左上葉切除術を実施し、病理診断で乳がんの肺転移と確認されています。
TNBCは免疫原性が高く、TILs(腫瘍浸潤リンパ球)が多い症例では免疫療法との相性が期待できます。当グループでは、外科的切除後の再発予防を目的とした樹状細胞ワクチン療法(SynerTri®のアクセル)を組み合わせる戦略を採っています。
| SynerTri®の役割 | 本症例での対応 |
|---|---|
| アクセル(免疫活性化) | 樹状細胞ワクチン療法でがん特異的免疫を誘導 |
| スイッチ(局所制御) | 左上葉切除術で転移巣を除去し抗原放出を促進 |
| 標準治療(化学療法) | 術前・術後FEC(6回)として別軸で実施済み |
Case Report ─ 当院の乳がん改善症例
重要症例
ここまでトリプルネガティブ乳がんの治療の考え方をご紹介しました。転移が見つかった場合でも、手術に免疫の働きを後押しする方法を組み合わせる設計を検討できます。実際に樹状細胞ワクチン療法を受けられた患者さまの経過をご紹介します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 診断名 | 乳がん(トリプルネガティブ)術後、肺転移(ステージⅣ) |
| 年齢・性別 | 46歳 女性 |
| 治療法 | 樹状細胞ワクチン療法+左上葉切除術 |
| 治療期間・回数 | 樹状細胞ワクチン療法は、1セット(7回)を1つのクール(治療単位)として実施します。本療法は、最初のクールを終えたあとも治療を継続される方が多くいらっしゃいます。 |
| 治療費 | 当院の治療はすべて自費診療(保険適用外)です。費用は改定される場合があるため、最新の金額は料金表をご確認ください。なお、クール終了後に治療を継続される場合は、別途費用がかかります。 |
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2013年6月 | 乳がん(トリプルネガティブ)と診断。術前化学療法(FEC)を4回施行。 |
| 2014年1月 | 乳房全摘術・腋窩リンパ節郭清を実施。術後に抗がん剤(FEC)2回+放射線治療を施行。 |
| 2014年11月 | CTにて肺転移が出現。 |
| 2015年1月 | 樹状細胞ワクチン療法を開始。投与部位に100mm大の発赤を確認(強い免疫反応)。 |
| 2015年2月 | 左上葉切除術施行。術後病理にて乳がんの肺転移と確認。術後は抗がん剤を使用せず、樹状細胞ワクチン療法単独でフォローアップ。 |
| 2019年9月(確認時) | 再発なく経過観察中。免疫療法開始から4年間以上無再発を維持。 |
当グループでは、標準治療(抗がん剤)を土台としつつ、プラスアルファで免疫の働きで後押ししていきます。進行がんでも免疫の働きを強化するために、患者さまの状況に応じて複合的に免疫を改善させる独自のプロトコルSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に免疫治療を設計します。
本症例では、標準治療としての抗がん剤(FEC)に、免疫を活性化する〈アクセル〉として樹状細胞ワクチン療法を、局所療法〈スイッチ〉として左上葉切除術を組み合わせています。切除によって放出された乳がん抗原が樹状細胞ワクチン療法と相乗的に作用し、より強力ながん特異的免疫の誘導が期待されます。
樹状細胞ワクチン療法の副作用は基本的にほとんど認められませんが、以下の可能性があります。
治療効果には個人差があります。同様の効果を保証するものではありません。
当グループでは他の乳がん症例として、乳がんステージ4で樹状細胞ワクチン療法を実施した症例、乳がんで長期経過を確認した症例も報告しています。

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