投稿日:2026.2.1/更新日:2026.4.6
この記事でわかること
2026年1月、膵臓がん診療の現場では「標準治療」のその先を見据えた、データの蓄積と解析に関するニュースが相次ぎました。 今月のトピックを、ゲノム解析・TME(腫瘍微小環境)・個別化医療の視点から紐解きます。
がんゲノム医療の普及により、膵臓がんでも「遺伝子変異」に基づいた治療選択が議論されています。
トピック: がん遺伝子パネル検査、実臨床での有用性解析(オンコロ 2026/01/27)
臨床的な意味: 膵臓がんではKRAS変異が大半を占めますが、一部の患者さんにはBRCA変異やMSI-Highなど、特定の薬が劇的に効く可能性のある変異が見つかります。今月の報告では、これらが単なる「研究」ではなく、実際の病院でどう機能しているかが示されました。「まず敵(遺伝子)を知る」という個別化医療の第一歩が、着実に標準化しつつあります。
国立がん研究センターなどから、最新の生存率データが公表されました。
トピック: がん5年生存率、初の全国登録集計。部位による顕著な差(Science Portal 2026/01/23)
臨床的な意味: 膵臓がんの生存率は依然として厳しい数字ですが、これは「発見時のステージ」に強く依存しています。数字を悲観するのではなく、「いかに早く精密な診断に繋げるか」という課題を再認識させるデータです。当院がゲノム解析や微小環境の評価を重視するのは、この数字を打破するための「戦略」が必要だからです。
1月の動向を総括すると、ゲノム解析という「情報の武器」が揃い始めています。 しかし、膵臓がんにはTME(腫瘍微小環境)という物理的な壁が存在します。遺伝子情報(Precision)に、環境(TME)への介入をどう組み合わせるか。この「統合」こそが、2026年における膵臓がん治療の本質であると私たちは考えています。
当院の実例
多発肺転移・肝転移を伴う膵臓がんステージ4で、抗がん剤・免疫療法・陽子線治療を組み合わせ、腫瘍マーカーの正常化と体調の回復が得られた症例
多発する肺転移・肝転移を伴うステージ4の膵臓がんに対して、抗がん剤と免疫療法に加え、陽子線治療など複数の手段を組み合わせる集学的治療を行いました。その結果、腫瘍マーカーが正常化し、体調も回復されています。生存率という全体の数字は、一人ひとりの経過をそのまま言い当てるものではありません。検査結果と治療への反応を見ながら手を組み替えていくことで、統計とは違う経過をたどる方もいらっしゃいます。
※個別の症例であり、治療効果には個人差があります。同じ結果をお約束するものではありません。
あります。膵臓がんの9割以上はKRAS変異ですが、BRCA変異やMSI-Highなど、特定の薬が効く可能性のある変異が見つかる方もいます。保険の検査は標準治療が終了または終了見込みの方が対象です。当院では自費のパネル検査や血液で調べるリキッドバイオプシーも扱い、結果の読み解きまで担当医が行います。
生存率は多くの方を集めた統計で、発見時のステージや年齢、全身状態によって大きく変わります。ご自身の見通しをそのまま示す数字ではありません。数字に引きずられるより、いまの病状で何ができるかを一つずつ確認していくことをおすすめします。
承認薬に結びつく変異が見つかる方は1〜2割程度と報告されています。見つからなかった場合も、腫瘍微小環境や免疫の状態をもとに、樹状細胞ワクチン療法や放射線・抗がん剤の組み合わせを設計できます。膵臓がんの治療のページもあわせてご覧ください。
監修医師
矢﨑 雄一郎医師
免疫療法・研究開発
東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、東京大学医科学研究所で免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の開発に従事。現在はプレシジョンメディカルケア理事長として活躍中。専門分野は免疫療法及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。