この症例のポイント
胆嚢がんは、肝臓でつくられた胆汁をためる胆嚢にできるがんで、胆管がんや十二指腸乳頭部がんとあわせて胆道がんと呼ばれます。初期は自覚症状に乏しく、健康診断の腹部超音波検査やCTで偶然見つかることや、胆石の手術後の病理検査で判明することがあります。進行すると腹痛、黄疸、体重減少などがみられます。
ステージは、がんが胆嚢の壁をどこまで越えているか(T)、リンパ節転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)で決まります。ステージⅢAは、がんが胆嚢の外側をおおう膜を越えて広がる、あるいは肝臓へ直接及んでいる一方で、リンパ節転移や遠隔転移は認められない段階です。手術で取りきることを目指せる段階ですが、再発のリスクは低くありません。
根治を目指す治療の柱は手術です。胆嚢の摘出に加えて、がんの広がりに応じて肝臓の一部(肝床)の切除やリンパ節の郭清を行います。
手術でがんを取りきれた場合、日本では術後の補助化学療法としてS-1(TS-1)の内服が行われます。これは国内の臨床試験(JCOG1202/ASCOT試験)で、切除後の胆道がんの生存期間を延ばすことが示された結果にもとづくものです。それでも再発が起こることはあり、肝臓は胆嚢がんが再発しやすい場所のひとつです。
手術後に肝臓などへ転移が見つかった場合、治療の中心は薬物療法に移ります。切除できない、あるいは再発した胆道がんの一次治療は、ゲムシタビン+シスプラチン(GC療法)が長く基本でしたが、現在はこれに免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブ(イミフィンジ)を加えたGCD療法が標準的な選択肢です。国内でも切除不能な胆道がんに対して承認されており、胆嚢がんもその対象に含まれます。このほかS-1を加えるGCS療法が用いられることもあります。
一方で、これらは点滴で複数の薬を使うため、骨髄抑制、倦怠感、吐き気、食欲低下などが出ることがあります。ご高齢の方や、日常生活の質を保つことを優先したい方では、内服のS-1単剤など負担の少ない組み立てが選ばれることもあります。どちらが良いかは一律には決まらず、病状と体の状態、ご本人が何を大切にしたいかをふまえて決めていきます。
当グループでは、この標準治療を土台に、免疫の働きを後押しする樹状細胞ワクチン療法(SynerTri®のアクセル)を組み合わせる設計を検討することがあります。抗がん剤でがん細胞が壊れると、がんの目印(抗原)が放出されます。樹状細胞ワクチン療法は、患者さまご自身の樹状細胞を体外で培養してこの目印を覚えさせ、体内に戻すことで、キラーT細胞にがんを攻撃させることを目指す治療です。
| SynerTri®の役割 | 本症例での対応 |
|---|---|
| 標準治療(土台) | 手術、抗がん剤 TS-1(内服) |
| アクセル(免疫活性化) | 樹状細胞ワクチン療法を併用し、がん特異的な免疫の誘導をねらう |
Case Report ─ 当院の胆嚢がん改善症例
重要症例
ここまで胆嚢がんの標準治療と、再発したときの考え方をご紹介しました。点滴で複数の薬を使う治療が負担になる場合でも、内服の抗がん剤を土台に免疫の働きを後押しする設計を検討できます。実際に樹状細胞ワクチン療法を受けられた患者さまの経過をご紹介します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 診断名 | 胆嚢がん(術後の肝転移) |
| ステージ | ステージⅢA(診断時)/術後に肝転移 |
| 年齢・性別 | 79歳 女性 |
| 発見の契機 | 健康診断で胆嚢の異常を指摘 |
| 標準治療 | 手術、抗がん剤(TS-1 内服) |
| 当院での治療 | 樹状細胞ワクチン療法 |
| 治療期間・回数 | 樹状細胞ワクチン療法は、1セット(7回)を1つのクール(治療単位)として実施します。本療法は、最初のクールを終えたあとも治療を継続される方が多くいらっしゃいます。 |
| 治療費 | 当院の治療はすべて自費診療(保険適用外)です。最新の金額は料金表をご確認ください。 |
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 20XX年 | 健康診断で胆嚢の異常を指摘され、近医を受診。精密検査の結果、胆嚢がん(ステージⅢA)と診断。 |
| 同年12月 | 手術を施行。 |
| 術後 | 前医で化学療法と免疫細胞療法を実施。しばらく経過は安定していた。 |
| 翌年10月 | 定期のCTで肝転移を指摘。 |
| 同年11月 | 複数の抗がん剤を組み合わせる治療も検討されたが、副作用で日常生活が送れなくなることを心配され、内服の抗がん剤(TS-1)を開始。同月より当院で樹状細胞ワクチン療法を開始。 |
| 開始から3か月後 | CTで肝転移巣が画像上確認できなくなった(CR)。 |
| 現在 | 経過を確認しながら治療を継続中。 |
治療経過タイムライン

当グループでは、標準治療(抗がん剤)を土台としつつ、プラスアルファで免疫の働きで後押ししていきます。進行がんでも免疫の働きを強化するために、患者さまの状況に応じて複合的に免疫を改善させる独自のプロトコルSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に免疫治療を設計します。
本症例では、術後に肝転移が見つかった時点で、点滴で複数の薬を併用する治療も選択肢にありました。しかしご本人が日常生活を送れなくなることを強く心配されたため、負担の少ない内服の抗がん剤(TS-1)を土台とし、免疫を活性化する〈アクセル〉として樹状細胞ワクチン療法を同じ月から併用する設計としました。開始から3か月後のCTで、肝転移巣は画像上確認できなくなっています。
内服の抗がん剤と樹状細胞ワクチン療法だけでこの経過が得られた例は多くはありません。治療の強さだけでなく、続けられる形に整えることが結果につながる場合があることを示す一例と考えています。
樹状細胞ワクチン療法の副作用は基本的にほとんど認められませんが、以下の可能性があります。
また、抗がん剤(TS-1)では、食欲低下、下痢、口内炎、色素沈着、骨髄抑制、肝機能や腎機能の変化などがみられることがあります。副作用の程度に応じて、減量や休薬を検討します。
治療効果には個人差があります。同様の効果を保証するものではありません。

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