投稿日:2026.6.1/更新日:2026.9.7
この記事のポイント
がん治療において免疫の力を引き出すアプローチは日進月歩で進化を続けています。免疫チェックポイント阻害薬の登場以降、複数の薬剤を組み合わせる併用療法や、がん細胞の周囲を取り巻く環境に働きかける治療の開発が世界中で活発に行われています。今月届いた基礎研究や臨床試験の最新知見を分かりやすく整理してお伝えします。
HER2陽性の切除不能・進行胃がんに対する一次治療として、新しい併用療法が全生存期間を有意に延ばすことが報告されました。国立がん研究センターなどの研究グループが国際共同第3相試験の結果として発表したものです。
従来の標準治療である分子標的薬や化学療法に、抗PD-1抗体であるチスレリヅマブと二重特異性抗体ザニダタマブを組み合わせました。がん細胞を直接狙い撃ちしながら、同時に免疫のブレーキを解除する設計です。この治療法はすでに臨床試験の最終段階に到達しており、今後の標準治療を大きく塗り替える可能性があります。
私たちの外来でも、胃がんで既存の抗がん剤治療に不安を感じる患者さんから相談を受ける機会が増えています。承認に向けた申請が進めば、実際の医療現場で選べる選択肢が広がる見込みです。気になる治療選択肢があれば、主治医や当グループにお気軽にご相談ください。
がん微小環境改善剤DFP-17729の臨床第2/3相比較試験において、第2相部分の症例登録が完了しました。創薬ベンチャーのDELTA-Pと日本ケミファが共同で進めている膵臓がんの3次治療以降を対象とした開発です。
膵臓がんは周囲に硬い間質が発達し、薬剤や免疫細胞が病変の中心部へ届きにくい特徴を持っています。DFP-17729はこの微小環境を改善して抗腫瘍効果を高める新しい仕組みの薬剤です。現在は将来の実用化を目指した臨床試験の段階であり、安全性と有効性の詳細な検証が進められています。
プレシジョンクリニックグループが創業以来最も取り組んでいるがん種のひとつが膵臓がんです。免疫療法単独では太刀打ちが難しい難治がんに対し、微小環境の改善を組み合わせる手法は大きな意義を持ちます。標準治療の変更を検討されている段階でも、主治医や当グループへご相談いただくことで整理が進む場合があります。
東京慈恵会医科大学の研究チームは、膀胱がんの浸潤境界部における詳細な遺伝子活動を空間トランスクリプトーム解析により解明しました。がんが周囲の正常組織へと広がっていく現場の環境を捉えた成果です。
この解析では組織の位置情報を保ったまま、がん細胞と周囲の免疫細胞の相互作用を観察できます。がん細胞がPD-L1などの免疫抑制分子を利用して免疫細胞の攻撃から逃れるメカニズムが、局所レベルでより明確になりました。本研究は将来の創薬に向けた基礎研究段階ですが、個別化医療の精度を高める基礎データになります。
当院でも患者さんから、自分の腫瘍組織の性質を詳しく知りたいという声をよく耳にします。病変の局所環境を精密に把握することは、免疫チェックポイント阻害薬が効きやすい状態かどうかを見極める指標につながります。治療戦略に迷いがある際は、検査の選択肢を含めていつでもご相談ください。
東京大学大学院新領域創成科学研究科の研究グループは、病気や免疫に関わるゲノム領域を日本人集団において高精度に解読したと発表しました。これまで解析が困難とされていた複雑な配列の特定に成功しています。
ヒトの免疫応答の強さや薬剤への反応性には、生まれ持った遺伝子配列の違いが関わっています。今回の解読技術によって、日本人に特有の免疫関連変異と疾患リスクの関連がより正確に把握できるようになります。研究段階の技術ではありますが、将来的ながん免疫療法の効果予測や副作用予測に直結する基盤です。
プレシジョンクリニックグループでは、最先端のゲノム解析データを臨床にどう還元するかを追求してきました。個人の体質に合わせた免疫療法の最適化は、個別化医療の根幹をなすテーマです。ご自身の遺伝子情報や治療適合性について疑問があれば、専門医や当グループにご相談ください。
今月は胃がんにおける抗PD-1抗体の併用臨床試験から、微小環境を狙う新薬開発、日本人ゲノムの基盤解読まで幅広い進展が見られました。免疫療法は単一の薬剤を使う時代から、微小環境の制御やゲノム解析を組み合わせた個別化医療へと着実に移行しています。
プレシジョンクリニックグループでは、多角的な解析に基づき患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療方針の提案を大切にしています。標準治療との併用や今後の治療計画について疑問をお持ちの方は、ぜひ当グループにお問い合わせください。
【監修】矢﨑雄一郎(プレシジョンクリニック東京院長/医療法人社団プレシジョンメディカルケア)
【免責事項】本記事は2026年05月に公表された公的機関の発表・査読論文・主要医学メディアの報道に基づいて作成しています。一般的な医療情報の提供を目的としており、特定の患者様への診療を行うものではありません。記載した治療のなかには、国内の保険適用や大規模臨床試験で標準治療として確立されていないものも含まれます。実際の治療方針は、必ず主治医または専門医にご相談ください。
【最終更新日】2026年8月28日