この症例のポイント
膵臓がん ステージⅣ。多発肺転移・肝転移を伴っていました。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 診断 | 腹部の痛みを契機に、膵臓がんステージⅣ(多発肺・肝転移)と診断。手術不能。 |
| 初診時の状態 | 食欲は約10%、日中の半分以上を臥床。腫瘍マーカーはCEA・CA19-9とも高値。 |
| 集学的治療 | 抗がん剤(FOLFIRINOX、のちにジェムザール+アブラキサン)を開始し、NK細胞療法→樹状細胞ワクチン療法→免疫チェックポイント阻害薬→陽子線治療を順次併用。温熱療法・栄養療法(低糖質高タンパク食・高濃度ビタミンC)も実施。 |
| 経過 | 1ヶ月単位で体調・食欲が改善。 |
| 腫瘍マーカー | CEA 8.4・CA19-9 1,410と高値でしたが、治療開始後に正常値まで改善。体調も発症前に近い状態まで回復。 |
腫瘍マーカー基準値:CEA 5 ng/mL以下/CA19-9 37 U/mL以下。

当グループでは、標準治療(抗がん剤)を土台としつつ、プラスアルファで免疫の働きで後押していきます。進行がんでも免疫の働きを強化するために、患者さまの状況に応じて複合的に免疫を改善させる独自のプロトコルSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で個別に免疫治療を設計します。
本症例では、標準治療としての抗がん剤(FOLFIRINOX、のちにジェムザール+アブラキサン)に、免疫を活性化する〈アクセル〉としてNK細胞療法・樹状細胞ワクチン療法を、免疫の〈ブレーキ解除〉として免疫チェックポイント阻害薬を、局所療法〈スイッチ〉として陽子線治療を組み合わせています。
本症例では、上記治療を支持するために温熱療法・栄養療法を併用しています。
樹状細胞ワクチン療法は、1セット(7回)を1つのクール(治療単位)として実施します。本療法は、最初のクールを終えたあとも治療を継続される方が多くいらっしゃいます。本症例は複数の治療を時期をずらして組み合わせた集学的治療です。
当院の治療はすべて自費診療(保険適用外)です。費用は改定される場合があるため、最新の金額は料金表をご確認ください。なお、クール終了後に治療を継続される場合は、別途費用がかかります。
免疫療法のうち、樹状細胞ワクチン療法・活性化リンパ球療法では重い副作用が認められることはほとんどありません。一方、免疫チェックポイント阻害薬では免疫が過剰に働くことによる副作用(免疫関連有害事象)に注意が必要です。主な副作用は以下のとおりです。
この症例は受診時の食欲が約10%まで低下していましたが、栄養療法と温熱療法で体力を支えながら、抗がん剤と免疫療法を段階的に導入しました。体力に合わせて順番と強さを調整することで、治療を始められる場合があります。
組み合わせられます。放射線で壊れたがん細胞が免疫の標的になるため、免疫療法との相性は良いと考えられています。この症例では免疫療法の後に陽子線治療を行い、その後に腫瘍マーカーが正常値まで改善しました。陽子線治療は連携する医療機関で行います。
抗がん剤・免疫療法・放射線・温熱・栄養など複数の治療を、患者さんの状態に合わせて組み合わせる考え方です。当院ではSynerTri®として、免疫を動かすアクセル・ブレーキ解除・局所療法のスイッチを順番に設計します。
※治療効果には個人差があり、すべての患者さまに同様の結果が得られるとは限りません。また、本症例で用いた治療には、国内の保険適応や大規模臨床試験で標準治療として確立されていないものも含まれます。実際の治療は、リスクとベネフィットを評価し、ご本人の同意のもとで設計します。
監修:矢﨑 雄一郎 医師
プレシジョンクリニック 東京院長/医療法人社団プレシジョンメディカルケア 理事長 | 専門分野:一般外科・消化器外科
がんゲノム情報に基づく個別化医療と免疫療法を専門とし、標準治療と組み合わせた治療設計に取り組んでいます。著書『免疫力をあなどるな!』。
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