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免疫療法

投稿日:2026.4.30/更新日:2026.9.21

膵臓がん最新治療2026年版|KRAS変異・新薬・ゲノム検査

この記事でわかること

  • 2026年の膵臓がん治療の動き:KRAS G12D変異を標的とする新薬の臨床試験開始と、8月の米国FDAによるダラクソンラシブ承認(日本未承認)。
  • ゲノム解析(がん遺伝子パネル検査)で何が分かり、治療にどうつながるか。
  • 「今すぐ使える治療」と「研究段階の治療」の線引き。
  • 当院で遺伝子パネル検査の結果をもとに治療を切り替え、コンバージョン手術に至った膵臓がんステージⅢの実例。

膵臓がん治療は2026年に大きく動きました。8月26日、米国FDAが膵臓がんに対する初のRAS標的薬ダラクソンラシブ(RASONQUE)を承認しています。この記事では、KRAS G12D変異を標的とする新薬の臨床試験開始と、ゲノム解析にもとづく個別化医療の進展を整理します。

2026年9月 更新

本文は2026年4月時点の情報です。その後2026年8月26日に米国FDAがダラクソンラシブ(RASONQUE)を転移性膵腺癌に対して承認しました(日本では未承認、承認時期は未定)。詳細はダラクソンラシブとは|FDA承認・RAS変異膵臓がん新薬の最新エビデンスをご覧ください。

膵臓がんという診断は、患者さんやご家族にとって大きな不安を伴うものです。特に進行性の膵臓癌では、有効な治療法の開発が強く望まれています。しかし、科学技術の進歩は止まることなく、日々新たな研究成果や治療薬の情報が私たちのもとに届いています。今月は、そんな膵臓がん治療に希望をもたらす重要なニュースが複数ありました。膵臓がんを専門とするプレシジョンクリニックグループから、ゲノム解析に基づいた個別化医療の進展に焦点を当て、最新の研究動向を分かりやすくお伝えします。

KRAS G12D変異を標的とする新薬への期待

今月、膵臓がん治療において特に注目すべきニュースがありました。アステラス製薬株式会社が、KRAS G12D変異陽性の転移性膵管腺がん(PDAC)を対象とした標的タンパク質分解誘導薬(TPD)「セチデグラシブ」の第3相臨床試験を開始し、最初の患者さんへの投与を行ったと発表しました。これは、膵臓がん治療の新たな時代を予感させる重要な一歩です。「KRAS遺伝子変異」は、膵臓がんの約9割に見られる遺伝子の変化です。この変異はがん細胞の増殖に深く関わりますが、これまで有効な治療薬の開発が非常に難しいとされてきました。特に「G12D変異」はKRAS変異の中でも頻度が高く、多くの膵臓がん患者さんがこのタイプに該当します。セチデグラシブは、このG12D変異を持つKRASタンパク質をピンポイントで分解するよう設計された薬剤です。 この薬剤はまだ第3相臨床試験の段階であり、今すぐ私たちの外来で一般的に使えるわけではありません。しかし、もし試験で有効性と安全性が確認されれば、標準治療として承認される可能性があります。これにより、これまで治療選択肢が限られていたKRAS G12D変異陽性の膵臓がん患者さんにとって、新たな希望となるでしょう。副作用や通院負担については、今後の試験結果を慎重に見守る必要があります。 また、別のニュースでも、KRAS阻害薬が膵臓がんの生存率を大きく向上させる可能性について報じられました。 これはセチデグラシブに限らず、KRAS変異を標的とする治療薬全般への期待が高まっていることを示しています。実際に、私たちの外来でもKRAS変異に対する治療に積極的に取り組んでいます。患者さんご自身がご自身の膵臓がんのKRAS変異の有無やタイプを知ることは、将来の治療選択肢を検討する上で非常に重要です。遺伝子パネル検査を実施されている患者さんは、主治医の先生に、ご自身のゲノム検査の結果について尋ねてみてください。

ゲノム解析が拓くがん治療の可能性

最近のがん治療では、患者さん一人ひとりの遺伝子情報に基づいた「個別化医療」がますます重要になっています。今月も、ゲノム解析ががん治療にもたらす可能性を示すニュースがいくつかありました。 例えば、日本人約4万人を対象とした大規模なゲノム解析の結果が発表されました。これによると、BRCA1/2遺伝子に変異を持つ場合、乳がんや卵巣がんだけでなく、頭頸部癌、甲状腺癌、膀胱癌、皮膚癌のリスクも上昇することが明らかになりました。 BRCA遺伝子変異は、膵臓がんの一部でも見つかることがあります。この変異を持つ膵臓がん患者さんには、PARP阻害薬という分子標的薬がすでに臨床で使われています。今回の研究は、BRCA変異が持つ広範な影響を改めて示し、ゲノム情報を早期に把握することの重要性を強調しています。 また、ALK融合遺伝子陽性の進行・再発固形がんに対する分子標的薬「アレクチニブ」について、がん種横断的な適応拡大が厚生労働省の部会で了承されたというニュースも注目されました。 これは、特定の遺伝子変異があれば、がんが発生した臓器に関わらず同じ薬剤が使えるようになることを意味します。承認されれば、ALK融合遺伝子陽性の場合にがん種横断的に使える初めてのALK阻害薬となります。 これらのニュースは、ゲノム解析によってがんのタイプを詳細に分類し、それに合わせた治療薬を選ぶ「個別化医療」が、着実に進展していることを示しています。膵臓がんにおいても、BRCA変異やKRAS変異のように、特定の遺伝子変異を持つ患者さんには、より効果的な治療薬が提供される時代が来ています。ご自身の膵臓がんの遺伝子変異について、ゲノム検査の可能性や、その結果が治療にどう影響するかを、個別化医療を専門とする私たちや、主治医に相談してみることをお勧めします。

当院の実例

遺伝子パネル検査をもとに治療を切り替え、縮小後にコンバージョン手術を行い寛解・無再発となった膵臓がんステージⅢ・36歳男性

急性膵炎の精査を契機に、傍大動脈リンパ節転移を伴う膵臓がんステージⅢと診断され、当初は手術も放射線治療も適応がありませんでした。抗がん剤(FOLFIRINOX)と樹状細胞ワクチン療法を開始しましたが病変が増大したため、遺伝子パネル検査を行い、抗がん剤を免疫チェックポイント阻害薬(キイトルーダ)へ変更しました(樹状細胞ワクチン療法は継続)。膵臓がんは約3分の2に縮小し、リンパ節転移も縮小、CA19-9は70台から正常化しました。縮小によりコンバージョン手術が可能となり、術後は寛解、現在まで再発なく仕事にも復帰されています。

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※個別の症例であり、治療効果には個人差があります。遺伝子パネル検査で治療が変わる方は一部であり、同じ結果をお約束するものではありません。

まとめ

2026年4月は、膵臓がん治療の未来に光を当てる重要なニュースが相次ぎました。特にKRAS遺伝子変異を標的とする新薬の臨床試験開始は、これまでアンメットニーズ(未だ満たされない医療ニーズ)が高かった膵臓癌治療において大きな希望となります。これは、ゲノム解析によって患者さん一人ひとりの膵臓がんの特性を理解し、それに合わせた「個別化医療」を進めることの重要性を強く示唆しています。 プレシジョンクリニックグループでは、このようなゲノム医療に特化し、またKRAS変異をはじめとして膵臓がんの研究動向に常に注目しています。分子標的治療や免疫療法といった新たな治療アプローチの開発は、創薬ベンチャーや国内製薬企業によって活発に進められています。今すぐ臨床で使える治療法だけでなく、将来の治療選択肢となる研究段階の情報も、患者さんやご家族に分かりやすくお伝えすることが私たちの使命です。ご自身の膵臓がんの状態や、最新の治療法について疑問があれば、遠慮なくプレシジョンクリニックグループにご相談ください。

よくある質問

膵臓がんのゲノム検査(がん遺伝子パネル検査)は、いつ受けるのがよいですか?

標準治療が効きにくくなってから慌てて受けるより、一次治療を始める前後に受けておくと、次の一手を早く準備できます。保険診療のパネル検査は「標準治療が終了した、または終了見込み」が条件のため、それより前に受けたい場合は自由診療になります。当院では初診時に検査の要否を一緒に判断します。

パネル検査を受ければ、必ず使える薬が見つかりますか?

見つからないことの方が多いです。膵臓がんで治療につながる変異が見つかる割合は全体の1割前後で、代表的なものはBRCA変異(約5%・オラパリブ)、MSI-H(約1%・免疫チェックポイント阻害薬)、KRAS G12C(約1〜2%)です。ただし、KRAS変異の種類が分かること自体が、今後の新薬や治験を検討する土台になります。

新薬や最新治療を当院で受けられますか?

治験中の薬(本文のG12D標的薬など)は当院では受けられません。当院で行えるのは、承認薬を含む抗がん剤・分子標的薬と、樹状細胞ワクチン療法や免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせた治療、およびその設計のための遺伝子パネル検査です。標準治療の全体像は膵臓癌の標準治療の解説を、KRAS変異のある方はRAS変異がん専門外来をご覧ください。

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    監修医師:矢﨑 雄一郎医師

    監修医師

    矢﨑 雄一郎医師

    免疫療法・研究開発

    東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、東京大学医科学研究所で免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の開発に従事。現在はプレシジョンメディカルケア理事長として活躍中。専門分野は免疫療法及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。

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