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TOP 用語集 CRS(腫瘍減量手術)とは|腹膜播種に対する外科的根治術の基礎知識

2026.6.16

CRS(腫瘍減量手術)とは|腹膜播種に対する外科的根治術の基礎知識

This Article Covers

この記事でわかること

  • CRS(腫瘍減量手術)の定義と目的
  • PCIスコア・CCスコアとは何か
  • HIPECとの関係・セット治療の意味
  • 対象がん種と適応条件
  • 合併症リスクと施設選びのポイント
  • 当院がCRS/HIPECを行えない患者さまに提供できる選択肢

Definition

CRS(Cytoreductive Surgery/腫瘍減量手術)とは、腹腔内に広がったがん(腹膜播種)に対し、腹腔内の腫瘍病変を肉眼的に可能な限り除去する外科手技です。米国の外科医Paul Sugarbaker氏が開発し、通常はHIPEC(温熱腹腔内化学療法)と組み合わせて行われます。

腹膜播種は、がん細胞が腹腔内に広がり腹膜に定着・増殖した状態で、かつては「手術不可」とされてきた病態です。CRSはその腹膜播種に対して、腫瘍を肉眼的にできる限り取り切る手術です。手術後にHIPECを組み合わせることで、残存する微小がん細胞の駆逐を目指します。

CRSの評価指標:PCIスコアとCCスコア

PCI(腹膜がん指数)——手術適応の判断に使う

PCI(Peritoneal Cancer Index)は、腹腔を13の領域に分けて各領域の腫瘍の大きさをスコア化し、合計したもの(0〜39点)です。スコアが高いほど腹膜播種が広範囲であることを意味します。

PCIスコア 目安 手術適応の一般的な考え方
0〜10 限局性 CRS+HIPEC の適応になりやすい
11〜20 中等度 がん種・全身状態により判断が分かれる
21〜39 広範囲 多くの場合、CRS+HIPECの適応外と判断される

※カットオフ値はがん種・施設・術者により異なります。

CCスコア(手術完遂度)——手術の「できばえ」を示す

CCスコア(Completeness of Cytoreduction)は手術後の残存腫瘍サイズで評価します。残存腫瘍が少ないほど予後が良い傾向があります。

CCスコア 残存腫瘍の大きさ 意義
CC-0 肉眼的残存なし 最良。HIPECの効果が最大化しやすい
CC-1 2.5mm以下 許容範囲。HIPEC薬剤が到達できる大きさ
CC-2 2.5mm〜2.5cm HIPECの効果が限定的になる
CC-3 2.5cm超 不完全切除。予後改善効果が限られる

CC-0またはCC-1の達成がCRS+HIPECの成否を大きく左右します。

CRS+HIPECの流れ

CRSとHIPECは通常、同じ手術室で連続して行われます。

① CRS(腫瘍減量手術)── 数時間
腹腔内を開き、腹膜・大網・小腸間膜・横隔膜など、がんが広がっている組織を切除します。場合によっては脾臓・胆嚢・子宮・結腸の部分切除も行います。
② HIPEC(温熱腹腔内化学療法)── 30〜90分
CRS直後に41〜43℃に加温した抗がん剤溶液を腹腔内に灌流させ、残存する微小がん細胞を直接攻撃します。詳細はHIPECの解説ページをご覧ください。

対象がん種と適応

腹膜偽粘液腫

最もエビデンスが確立されたがん種。5年生存率80%超の報告もある。Sugarbaker法の主要適応。

卵巣がん腹膜播種

再発卵巣がんを対象にしたOVHIPEC-1試験でCRS+HIPECの有意な生存改善を報告。欧米で広く行われている。

悪性腹膜中皮腫

標準治療が限られる中、CRS+HIPECが有効な選択肢。専門施設での実施が推奨される。

大腸がん腹膜播種

PCI低値・限局性播種例では生存延長の報告あり。PRODIGE 7試験ではHIPECの上乗せ効果は確認されなかったが、CRS単独の有用性は示された。

胃がん腹膜播種

日本・韓国・中国で研究が進んでいるが、標準治療とはなっていない。コンバージョン手術(化学療法で縮小後に手術)との組み合わせが検討されている。

膵臓がん腹膜播種

現時点では症例報告レベルであり、実験的段階。標準適応外。

CRSの合併症リスク

CRS+HIPECは6〜12時間に及ぶ大手術です。経験施設でも重篤合併症率は30〜60%とされており、適応判断と施設選びが極めて重要です。

主な合併症

  • 縫合不全・吻合部リーク
  • 腸閉塞(術後の癒着)
  • 感染症・腹膜炎
  • 腎機能障害(HIPEC薬剤の影響)
  • 骨髄抑制(白血球・血小板の減少)
  • 胸水・腹水の貯留
  • 血栓症

年間症例数が多い経験施設ほど合併症率・死亡率が低い傾向が報告されています。受診前に施設の年間症例数・専門チームの有無を確認することが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q. CRS(腫瘍減量手術)とはどんな手術ですか?

腹腔内に広がったがん(腹膜播種)に対し、腹腔内の腫瘍病変を肉眼的に可能な限り除去する外科手技です。通常HIPECと組み合わせて行われます。

Q. CRSのCCスコアとは何ですか?

手術後の残存腫瘍サイズで評価する手術完遂度の指標です。CC-0(残存なし)〜CC-3(2.5cm超)まであり、CC-0またはCC-1の達成が最も重要です。

Q. PCIスコアとは何ですか?

腹腔を13領域に分け、各領域の腫瘍サイズを合計したスコア(0〜39点)です。高いスコアは播種が広範囲であることを意味し、手術適応の判断に使われます。

Q. CRSはどんながん種に行われますか?

腹膜偽粘液腫・卵巣がん・悪性腹膜中皮腫・大腸がん腹膜播種で行われます。胃がん腹膜播種は研究中、膵臓がんは実験的段階です。

Q. CRSの合併症リスクはどのくらいですか?

6〜12時間の大手術で、経験施設でも重篤合併症率は30〜60%とされています。縫合不全・腸閉塞・感染症・腎機能障害などが主な合併症です。

CRS/HIPECが適応外の場合の選択肢

PCIスコアが高い・全身状態が手術に耐えられない・播種が広範囲で完全切除が困難などの理由でCRS/HIPECの適応外と判断された場合でも、薬物療法や免疫療法の組み合わせで改善が得られた症例があります。

プレシジョンクリニックでは、CRS/HIPECの適応がない腹膜播種の患者さまに対しても、バイオマーカー・治療歴をもとに抗がん剤と免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の組み合わせを検討しています。

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CRS/HIPECの適応判断・他院で手術不可と言われた方・術後再発でお困りの方もご相談いただけます。

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※本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。治療の適応・実施については必ず担当医にご確認ください。治療効果には個人差があります。

矢﨑雄一郎 プレシジョンクリニック東京院長

【監修者】矢﨑 雄一郎

プレシジョンクリニック東京院長。免疫療法・樹状細胞ワクチン療法を専門とし、腹膜播種症例を多数経験。腹膜播種に対するSynerTri®(iCCI)の設計・実施に携わる。