投稿日:2026.10.6/更新日:2026.11.6
この記事でわかること
大腸がんは早期発見と適切な治療選択により、根治を目指せる疾患です。一方で、内視鏡検査のタイミングや手術後の後遺症、転移への不安を抱える方は少なくありません。今月は予防や手術の負担軽減から将来の分子標的治療まで、日々の診療に直結する新たな知見が報告されました。ご自身やご家族の治療方針を考える際の手がかりとしてご活用ください。
良性ポリープを切除した後の内視鏡検査は、患者さまのリスクに応じて間隔を調整することが推奨されます。米国の医学誌NEJMに掲載された大規模研究により、腺腫切除後の大腸癌発症リスクと検査間隔の関連が明らかになりました。
切除したポリープの大きさや個数によって、その後の発症危険度は大きく異なります。低リスク群であれば毎年のように検査を繰り返す必要性は低く、適切な間隔を空けても安全性が保たれることが示されました。不要な検査を減らすことは、身体的かつ経済的な負担の軽減につながります。
この結果はすでに海外のガイドライン改定に影響を与えており、日常診療の現場でも活用できる知見です。外来でも患者さまから「ポリープを取った後は毎年カメラを受けるべきですか」と質問されることがあります。ご自身のリスク分類や次回の適切な検査時期について、主治医や当グループにご相談ください。
直腸がんの手術において、粉末型癒着防止材SI-449が術後の腸管癒着を有意に防ぐことが確認されました。国立がん研究センターを中心とする研究グループが、臨床試験の成果として発表しました。
直腸がんの手術後は、腸管同士や腹壁が癒着して腸閉塞を引き起こす危険性があります。従来のシート型防止材は狭い骨盤腔内への貼付が難しいという課題を抱えていました。これに対して粉末型のSI-449は、腹腔鏡手術やロボット手術の狭い視野でも病変部へ均一に散布できます。
この製剤は実用化に向けた最終段階にあり、近い将来の保険適用が期待されています。術後合併症が減れば入院期間が短縮し、早期の社会復帰や術後補助化学療法への移行が円滑になります。骨盤内の手術を控えている方は、癒着予防の工夫についてお気軽にご相談ください。
がん細胞が栄養源として必要とする鉄の取り込み口をふさぐことで、大腸がんの肝転移を抑える新技術が開発されました。群馬大学の研究グループが、マウス実験において顕著な転移抑制効果を確認したと発表しました。
大腸がんは進行すると肝臓へ転移しやすい性質を持っています。研究チームは、がん細胞の表面に多く存在するトランスフェリン受容体に着目しました。特異的な抗体を用いて鉄の補給路を遮断すると、腫瘍微小環境におけるがん細胞の増殖が停止し、肝臓への生着が妨げられました。
本研究は基礎実験の段階であり、ヒトを対象とした治験の開始には数年を要する見込みです。とはいえ、既存の抗がん剤とは全く異なるアプローチであり、薬剤耐性を克服する新たな分子標的治療として注目されます。進行期の大腸癌に対する将来の創薬パイプラインとして、今後の進展が待たれます。
早期の結腸がんや直腸がんに対するロボット支援手術は、根治性の向上と機能温存を高い水準で両立させています。リンパ節転移がない段階で発見できれば、5年生存率は8割を超えると報告されています。
直腸の周囲には排尿や性機能を司る自律神経が網の目のように走行しています。高精細な3D画像と多関節鉗子を用いるロボット手術は、神経をミリ単位で温存する処置を可能にしました。肛門に近い病変であっても、自然な肛門を残せる確率が従来の手術より向上しています。
当院でも患者さまから「人工肛門を避けられないか」という切実な悩みを伺う機会が多くあります。現在では多くの施設で保険適用となっており、進行度や腫瘍の位置に応じて最適な術式を選択できます。手術に伴う生活への影響に不安をお持ちの方は、主治医や当グループにご相談ください。
大腸がんの薬物療法では、がん組織の遺伝子異常をあらかじめ調べるゲノム解析が標準となっています。RAS遺伝子やBRAF遺伝子の変異、MSIと呼ばれる遺伝子の不安定性を測定し、最も適した薬剤を選択します。
近年では初回治療から遺伝子検査を実施し、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を使い分ける個別化医療が定着しました。がん細胞だけでなく周囲の腫瘍微小環境を評価することで、免疫療法の効果を予測する試みも進んでいます。治療開始前に網羅的なプロファイルを把握することが、無駄な副作用を避ける鍵となります。
私たちの外来でも「自分のがんに合う標的薬があるか調べてほしい」と来院される方が増えています。当グループではがんゲノム解析の実績を積み上げており、標準治療の枠組みを超えた選択肢の探索にも取り組んでいます。精密検査の結果をもとに最適な方針を立てたい方は、いつでもご相談ください。
2026年9月の大腸がん領域では、検査間隔の適正化から低侵襲な手術手技、そして基礎研究における分子標的の探索まで幅広い進展が見られました。大腸がんはプレシジョンクリニックグループが創業以来最も取り組んでいるがん種であり、私たちはゲノム解析を活用した精度の高い個別化医療を大切にしています。画一的な治療にとどまらず、患者さま一人ひとりの病態や遺伝子背景に合わせた選択肢を提示することに注力しています。
治療方針やセカンドオピニオンについてお悩みの方は、当グループへお気軽にご相談ください。
毎年とは限りません。NEJMに掲載された大規模研究で、切除したポリープの大きさや個数で分けた低リスク群なら、間隔を空けても安全性が保たれることが示されました。海外のガイドライン改定にも影響しています。ご自身のリスク分類と次回の時期は主治医にご確認ください。
まだ一般の診療では使えません。国立がん研究センターを中心とした臨床試験で、直腸がん手術後の癒着を防ぐ効果が確認され、実用化に向けた最終段階にあります。近い将来の保険適用が期待されています。
受けられません。群馬大学のマウス実験で肝転移を抑えた基礎研究の段階で、ヒトを対象とした治験の開始には数年かかる見込みです。既存の抗がん剤とは異なる仕組みのため、将来の分子標的治療として注目されています。
監修:矢﨑 雄一郎 医師
プレシジョンクリニック 東京院長/医療法人社団プレシジョンメディカルケア 理事長 | 専門分野:一般外科・消化器外科
がんゲノム情報に基づく個別化医療と免疫療法を専門とし、標準治療と組み合わせた治療設計に取り組んでいます。著書『免疫力をあなどるな!』。
【免責事項】本記事は2026年9月に公表された公的機関の発表・査読論文・主要医学メディアの報道に基づいて作成しています。一般的な医療情報の提供を目的としており、特定の患者さまへの診療を行うものではありません。記載した治療のなかには、国内の保険適用や大規模臨床試験で標準治療として確立されていないものも含まれます。実際の治療方針は、主治医または専門医にご相談ください。
【最終更新日】2026年10月1日
監修医師
矢﨑 雄一郎医師
免疫療法・研究開発
東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、東京大学医科学研究所で免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の開発に従事。現在はプレシジョンメディカルケア理事長として活躍中。専門分野は免疫療法及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。