この記事でわかること
Nature Medicine誌の解説「CAR T cells take on precancers」が取り上げたのは、高リスクくすぶり型多発性骨髄腫へのCAR-T(cilta-cel)第2相試験であること
CAR-PRISM試験20例の実数値:全員がMRD陰性、追跡中央値15.3か月で進行ゼロ
その代償:サイトカイン放出症候群100%、神経毒性35%。無症状の人にこれを受け入れてもらえるのか
既存の選択肢(経過観察・ダラツムマブ)との違いと、この数字をどこまで信じてよいか
当グループがCAR-Tを含む免疫細胞療法をどう位置づけているか
症状が出る前の段階でCAR-T細胞療法を使うと、どこまで深く効くのか。その答えのひとつが、2026年4月にNature Medicine誌へ掲載されたCAR-PRISM試験です(Nadeem O, et al. Nat Med 2026;32:2420-2429. DOI: 10.1038/s41591-026-04365-y/ClinicalTrials.gov NCT05767359)。対象は、まだ骨髄腫を発症していない「高リスクくすぶり型多発性骨髄腫」の患者さま20人。BCMAを標的とするCAR-T、シルタカブタゲン オートルユーセル(cilta-cel、国内製品名カービクティ)を1回点滴したところ、20人全員が高感度検査で病変を検出できない状態(MRD陰性)に入りました。
ただし、効果の深さと同じくらい重い数字も並んでいます。サイトカイン放出症候群は全員に起き、神経の副作用も20人中7人に出ました。うち3人は、軽度とはいえ運動や思考の症状が残ったままです。同誌6月号の解説記事(Jurgens EM, Mailankody S. Nat Med 2026;32:2358-2359. DOI: 10.1038/s41591-026-04473-9)が結論として置いたのは、成功の鍵は慎重な患者選択にある、という一文でした。
本記事ではこの2本を原著の数値のまま読み、どこが新しく、どこがまだ言えないのかを整理します。なお、当院の以前の下書きでは本論文を「前がん病変へのCAR-Tの作用を調べた研究」と紹介していましたが、実際は血液がんの前段階を対象とした臨床試験です。訂正したうえで書き直しました。
「発症前」の骨髄腫とはどんな状態か
多発性骨髄腫は、抗体をつくる形質細胞ががん化して起こる血液のがん。ほとんどの場合、いきなり発症するわけではありません。形質細胞の小さなクローンが何年もかけて増え、段階を踏んで進んでいく。
くすぶり型多発性骨髄腫(smoldering multiple myeloma:SMM)とは:
骨髄の中で異常な形質細胞が増えているものの、貧血・腎障害・高カルシウム血症・骨病変といった臓器障害がまだ出ていない状態。国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)の基準では、血清M蛋白3 g/dL以上(または尿中M蛋白500 mg/24時間以上)かつ/または骨髄のクローナルな形質細胞が10〜60%で、骨髄腫を定義する事象やアミロイドーシスがないものを指します(Rajkumar SV, et al. Lancet Oncol 2014;15:e538-e548. DOI: 10.1016/S1470-2045(14)70442-5)。
解説記事のタイトルは「precancers(前がん)」ですが、厳密にはくすぶり型もすでに腫瘍性の細胞集団です。「がんになる前」というより「症状が出る前の骨髄腫」と捉えるほうが正確でしょう。本記事でもその意味で「前がん段階」という言葉を使います。
該当する人の数を示したのが、アイスランドで40歳以上の住民75,422人を血液検査でスクリーニングしたiStopMM研究で、くすぶり型の有病率は0.53%と報告されています。男性0.67%、女性0.39%で、年齢とともに増えます(Thorsteinsdóttir S, et al. Nat Med 2023;29:467-472. DOI: 10.1038/s41591-022-02183-6)。決して珍しい状態ではない。
表1 骨髄腫へ進むまでの3段階(早見表)
| 段階 |
骨髄の異常形質細胞 |
臓器障害 |
標準的な対応 |
| MGUS(意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症) |
10%未満(M蛋白3 g/dL未満) |
なし |
経過観察 |
| くすぶり型多発性骨髄腫(SMM) |
10〜60%(またはM蛋白3 g/dL以上) |
なし |
経過観察が基本。高リスク群では早期介入の臨床試験が進む |
| 多発性骨髄腫(MM) |
10%以上または形質細胞腫 |
あり(または骨髄腫を定義するバイオマーカー) |
治療開始 |
出典:Rajkumar SV, et al. Lancet Oncol 2014;15:e538-e548. DOI: 10.1016/S1470-2045(14)70442-5/表:プレシジョンクリニック作成(基準の一部を簡略化)
同じくすぶり型でも、進みやすさは3倍以上違う
くすぶり型の中身は均一ではありません。IMWGが23か国1,996人のデータから作ったリスク分類「20/2/20」は、3つの因子で進行リスクを分けるものでした。骨髄の形質細胞20%超、血清M蛋白2 g/dL超、遊離軽鎖比20超です。因子がゼロの低リスク群では、2年以内に骨髄腫へ進んだのは6%、1つの中間リスク群で18%でした。2つ以上そろう高リスク群では44%に上ります(Mateos MV, et al. Blood Cancer J 2020;10:102. DOI: 10.1038/s41408-020-00366-3)。CAR-PRISM試験が対象にしたのは、この高リスク群、またはそれに相当するスコアの患者さまです。
44%という数字は、裏返せば56%は2年のあいだ進まないということでもあります。この裏側の数字が、あとで効いてくる。
CAR-Tは「最後の手段」から「最初の一手」へ動けるか
CAR-T細胞療法とは:
患者さま自身のT細胞を採取し、がん細胞の表面にある目印を認識する人工の受容体(キメラ抗原受容体:CAR)を遺伝子導入して増やし、体に戻す治療。1回の点滴で体内に定着し、増殖しながら攻撃を続けるのが特徴です。国内では、BCMAを標的とするcilta-cel(カービクティ)が、免疫調節薬・プロテアソーム阻害薬・抗CD38抗体を含む3つ以上の前治療歴がある再発・難治性多発性骨髄腫を対象に2022年9月に承認されています。
BCMA(B細胞成熟抗原)とは:
形質細胞の表面に多く出ているタンパク質で、骨髄腫細胞にもほぼ共通して存在します。細胞表面にあるため、抗体由来の認識部位を持つCAR-Tが直接つかめる標的です。
骨髄腫でのCAR-Tは、これまで「何度も再発したあとに使う治療」でした。国内の承認条件がまさにそうなっている。CAR-PRISM試験は、その順番をいちばん手前まで引き寄せた試みです。しかも導入療法もブリッジング療法も使わず、CAR-T単独で勝負した。
なぜ早い段階なのか。病変が小さく、何度も抗がん剤を受けたことによるT細胞の疲弊もない。そういう時期ほど、患者さま自身のT細胞からつくるCAR-Tは力を出しやすいのではないか。試験の設計はこの発想の上に立っていると読めます(ここは当院の推論です。原著はこの仮説を直接検証していません)。
CAR-PRISM試験の20例 — 全員がMRD陰性に入った
MRD(微小残存病変)陰性とは:
通常の検査では見えないほどわずかに残った腫瘍細胞を、次世代シークエンサーなどの高感度検査で調べ、検出限界以下になった状態。10-6(100万個の細胞に1個)の感度で陰性なら、極めて深い効果と評価されます。ただし「病気が消えた」ことの証明ではありません。
試験は米国ダナ・ファーバーがん研究所の単施設で行われた第2相・単群試験です。23人が登録され、20人がcilta-celを受け、年齢の中央値は58歳(37〜78歳)でした。骨髄の形質細胞が40%を超える人は除外されています。前処置はフルダラビン30 mg/m²とシクロホスファミド300 mg/m²を3日間投与し、2日空けてCAR-Tを点滴する手順でした。用量は当初0.5〜1.0×106個/kgでしたが、途中で神経毒性の兆候が出たため、最後の7人は0.3×106個/kgに減らされました。最終的に12人が0.3〜0.5×106個/kg、8人が0.5×106個/kg以上を受けた計算になる。
表2 CAR-PRISM試験の主要成績
| 項目 |
結果 |
| 主要評価項目(投与後60日の用量制限毒性) |
0例 |
| MRD陰性(10-6・次世代シークエンス) |
20例中20例(100%)。到達までの中央値1か月、全例が投与2か月までに到達 |
| 最良効果:完全奏効以上(CR/sCR) |
20例中18例(90%)。6か月以上追跡できた16例は全例 |
| 追跡期間中央値 |
15.3か月 |
| 病勢進行・死亡 |
いずれも0例(無増悪生存期間・全生存期間の中央値は未到達) |
| 製造 |
全例で成功。アフェレーシスから投与まで中央値56日 |
出典:Nadeem O, et al. Nat Med 2026;32:2420-2429. DOI: 10.1038/s41591-026-04365-y/ClinicalTrials.gov NCT05767359/表:プレシジョンクリニック作成
この深さは、従来の早期介入と比べても際立つ。原著の考察によれば、カルフィルゾミブ・レナリドミド・デキサメタゾンに自家移植とレナリドミド維持療法を組み合わせたGEM-CESAR試験でも、MRD陰性化は約60%、4年後まで陰性が続いたのは31%でした。20人全員というのは、少なくとも数字の上では別次元の結果でした。
血液中の可溶性BCMAは、用量にかかわらず投与後すぐに下がりました。56日目には20人中18人、100日目には19人が、健康な対照者の中央値を下回りました。標的そのものが体から減っていく様子が、検査値でも追えたことになる。
どの免疫細胞療法が合うのかは、病状と治療歴から整理できます
深い効果の代償 — 無症状の人に起きた副作用
ここからが、この試験を評価するうえで避けて通れない部分です。対象の20人は、治療を始める時点で何の症状もありませんでした。その人たちに起きた有害事象を、表3に示す。
表3 CAR-PRISM試験の主な有害事象(20例)
| 有害事象 |
頻度・内容 |
| サイトカイン放出症候群(CRS) |
20例全例(100%)。グレード1が17例(85%)、グレード2が3例(15%)、グレード3以上0例。トシリズマブ使用85%、デキサメタゾン使用65% |
| 免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS) |
報告なし |
| ICANS以外の神経毒性(NINT) |
7例(35%)。発症中央値21日(10〜52日) |
| うち脳神経麻痺 |
4例。グレード1が3例、グレード2が1例(両側顔面神経麻痺と多発単神経炎)。全例が完全に回復 |
| うち持続する症状 |
3例でグレード1の症状が持続(振戦、動作緩慢、思考の緩慢、歩行障害、細かい作業時の振戦など) |
| 好中球減少 |
グレード4が11例(55%)、グレード3が7例(35%)。持続期間中央値7日 |
| 感染症 |
すべてグレード1〜2。最多は上気道(25%)。全例が免疫グロブリン補充を受けていた |
| 二次がん・死亡 |
観察期間中は0例 |
出典:Nadeem O, et al. Nat Med 2026;32:2420-2429. DOI: 10.1038/s41591-026-04365-y/表:プレシジョンクリニック作成
CRSはすべてグレード2までにとどまり、命に関わる重症例は出ていません。問題は神経のほうだった。神経毒性が出た7人のうち5人は、0.5〜0.8×106個/kgという高めの用量を受けていました。用量を0.3×106個/kgに下げたのは、このためでした。
持続症状が残った3人のうち1人では、皮膚生検でリン酸化α-シヌクレインが検出され、パーキンソン病への素因があった可能性も論じられています。CAR-Tだけが原因なのか、もともとの素因が表に出たのか。20人の試験では切り分けられず、わからない、というのが正直なところです。
解説記事の著者らが強調したのも、まさにこの非対称性でした。再発を繰り返した骨髄腫なら、この副作用は受け入れられる範囲でしょう。けれども、放っておいても半数以上は2年間進まない集団に同じ副作用を負わせてよいのか。だから「誰に使うか」の選別がすべてを決める、という立場をとっていました。
既存の選択肢と並べると何が見えるか
高リスクくすぶり型には、すでに第3相試験で検証された早期介入があります。抗CD38抗体ダラツムマブの皮下注を最長3年間投与したAQUILA試験です。390人を無作為に分け、5年時点で進行していなかった人はダラツムマブ群63.1%、経過観察群40.8%でした(ハザード比0.49)。5年全生存率も93.0%対86.9%でした(Dimopoulos MA, et al. N Engl J Med 2025;392:1777-1788. DOI: 10.1056/NEJMoa2409029)。
表4 高リスクくすぶり型多発性骨髄腫への主なアプローチ
| 項目 |
経過観察 |
ダラツムマブ(AQUILA) |
cilta-cel(CAR-PRISM) |
| 試験デザイン |
AQUILAの対照群 |
第3相・無作為化・390例 |
第2相・単群・単施設・20例 |
| 治療の形 |
定期検査 |
皮下注を最長3年間 |
1回の点滴(前処置化学療法あり) |
| 主な結果 |
5年無増悪生存率40.8% |
5年無増悪生存率63.1% |
MRD陰性100%、15.3か月で進行0例 |
| 主な安全性 |
グレード3以上の有害事象30.1% |
グレード3以上の有害事象40.4%、有害事象による中止6.7% |
CRS 100%、神経毒性35%、グレード3〜4好中球減少90% |
| 長期データ |
あり |
あり(中央値5年超) |
なし(追跡15.3か月) |
出典:Dimopoulos MA, et al. N Engl J Med 2025;392:1777-1788. DOI: 10.1056/NEJMoa2409029/Nadeem O, et al. Nat Med 2026;32:2420-2429. DOI: 10.1038/s41591-026-04365-y/表:プレシジョンクリニック作成。評価項目も対象も異なる試験を並べたもので、優劣の比較はできません
表は並べてありますが、横に比べて勝ち負けを決めることはできません。AQUILAが測ったのは5年間の進行の有無、CAR-PRISMが測ったのは短期の安全性とMRDです。物差しがまったく違う。言えるのは、ダラツムマブは「長く、穏やかに押さえる」、cilta-celは「一度で深く叩く」という、性格の異なる戦略だということまでです。
この数字を大きく読みすぎないために
MRD陰性100%は強い数字だ。だからこそ、原著の著者自身が挙げた限界から読んでいく。
第一に、単群・単施設・20人の試験であること。比較対照がないため、cilta-celを受けなかったら同じ人たちがどうなっていたかはわかりません。第二に、追跡期間が15.3か月と短い。くすぶり型は年単位でゆっくり進む病態で、この長さで「進行ゼロ」を評価するのは、まだ早すぎます。第三に、MRD陰性が長期の結果に結びつくかは、くすぶり型ではまだ確かめられていません。再発・難治性の骨髄腫では有力な予後因子ですが、同じ物差しが発症前の段階でも通用するかは別問題です。著者らも、早期の細胞療法が長期の経過を変えるかどうかを見極めるには長期追跡が不可欠だと書いていました。
第四に、患者選択の偏りがあります。骨髄の形質細胞40%超は除外され、治療後の血球回復や毒性を予測するスコアでも全員が低リスクでした。いわば「CAR-Tに耐えやすい人」が集まった試験だった。第五に、過剰治療の問題です。高リスク群でも2年で進むのは44%で、残りの人は治療しなくても当面は症状が出なかったかもしれません。
最後に、アフェレーシスから投与までに中央値56日かかり、入院管理も要るという、コストと時間の問題が残ります。論文はこの点を評価していませんが、実臨床に広げるなら避けて通れない論点になる。この試験は「CAR-Tを前倒しできる可能性」を示したのであって、「前倒しすべきだ」を示したのではありません。
日本でいま、この治療は受けられるのか
結論から言えば、受けられません。cilta-celの国内承認は、3つ以上の前治療歴がある再発・難治性の多発性骨髄腫に限られています。くすぶり型への使用は承認の範囲外で、CAR-PRISMは米国の単施設試験です。国内で同様の臨床試験が行われているかは、本稿では確認できていません。関心のある方は、jRCTやClinicalTrials.govで最新の登録情報を確かめてください。
くすぶり型と診断されている方にとって、いま確実に言えることは多くありません。リスク分類を主治医と確認し、定期的な検査を続けること。高リスクと言われた場合は、早期介入の臨床試験を含めて血液内科の専門医と相談すること。この2つです。
当グループがこの論文を読む理由
この論文が扱ったのは、血液がんの前段階です。それでも当グループが取り上げたのは、免疫細胞療法を「いつ使うか」という問いが、がん種を超えて共通しているからです。
当グループは
WT1を標的とする
樹状細胞ワクチン療法を2007年に世界で初めて実用化し、1グループで約6,500症例の細胞治療を提供してきました。最終的に患者さま自身の免疫で再発を防ぐ、その核になるのは樹状細胞だと考えています。
当グループの取り組み
実績:WT1樹状細胞ワクチン療法の実用化(2007年・世界初)、1グループで約6,500症例の細胞治療。
CAR-Tがつかめるのは、細胞表面に出ている目印に限られる。
MAGE-A4のように細胞の中にある抗原には原理的に届きません。一方で、BCMAのように表面にはっきり出ている標的があれば、今回のように極めて深い効果を出せます。どの細胞療法にも得意な場面と苦手な場面がある。どれか一つで完結させず、患者さまの状態に合わせて組み合わせを考える、というのが当グループの基本姿勢です。
固形がんでは、細胞療法がもう一つの壁にぶつかります。腫瘍を取り囲む
腫瘍微小環境(TME)です。免疫細胞が腫瘍の中に入れるかどうかが、成否を分ける。進行がんの免疫療法は「免疫側」と「がん側」の両輪がそろって完結する、というのが当グループの立場です。血液の中で標的に出会える骨髄腫と、線維性の城壁に守られた固形がんとでは、同じCAR-Tでも条件がまるで違います。
ここからは推論です。CAR-PRISMの結果が示すのは、病変が小さく、免疫がまだ疲れていない段階ほど、細胞療法の力が引き出されやすいという可能性だと当グループは考えています。固形がんでも、手術後の再発予防や治療早期に免疫を組み立てる考え方と、方向性は重なる部分がある。ただし、骨髄腫で得られたこの結果を固形がんに当てはめる根拠は、現時点ではありません。そこは分けて書いておきます。
よくあるご質問
くすぶり型多発性骨髄腫と言われました。すぐに治療が必要ですか
多くの場合、すぐに治療を始めるのではなく、定期的な検査で経過を見ます。ただし進行のしやすさには差があり、IMWGの20/2/20分類では、2年以内に骨髄腫へ進む割合が低リスク群6%、高リスク群44%と報告されています。ご自身がどのリスク群にあたるかを主治医と確認することが出発点です。
CAR-T細胞療法をくすぶり型の段階で受けられますか
現時点では受けられません。国内で承認されているcilta-cel(カービクティ)の対象は、3つ以上の前治療歴がある再発・難治性の多発性骨髄腫です。CAR-PRISM試験は米国の単施設で行われた第2相試験で、くすぶり型への使用は研究段階にとどまります。
MRD陰性になれば、病気は消えたと考えてよいのですか
そうとは言えません。MRD陰性は、高感度の検査で腫瘍細胞が検出限界以下になったことを意味します。極めて深い効果の指標ですが、くすぶり型の段階でMRD陰性が長期の経過改善に結びつくかは、まだ確かめられていません。CAR-PRISM試験の追跡期間は、中央値で15.3か月にとどまっています。
CAR-Tの神経の副作用とはどのようなものですか
CAR-PRISM試験では、20人中7人(35%)にICANS以外の神経毒性が出ました。4人は顔面神経などの脳神経麻痺で、全員が完全に回復しました。3人では振戦や動作の遅さ、歩行の障害といった軽度の症状が続いています。高めの用量で多く見られたため、試験の途中で用量が引き下げられました。
ダラツムマブとCAR-Tは、どちらが優れていますか
比較できるデータはありません。ダラツムマブのAQUILA試験は390人の無作為化第3相試験で、5年間の進行抑制を示しました。CAR-PRISM試験は20人の単群試験で、短期のMRD陰性化を示したものです。対象も評価項目も違うため、どちらが優れているかは判断できません。
プレシジョンクリニックでは骨髄腫の相談もできますか
くすぶり型を含む骨髄腫の標準治療や臨床試験への参加は、まず血液内科の専門医療機関でのご相談をおすすめします。そのうえで、免疫療法全般についてのご質問や、ほかのがんでの免疫細胞療法のご相談は、無料医療相談でお伺いします。
ご相談の流れ
1. 相談フォームの送信 無料医療相談フォームから、現在のご病状をお知らせください。
2. 治療歴の整理 これまでの治療内容・検査結果・遺伝子検査の有無を整理します。
3. 選択肢の整理 標準治療の位置づけを確認したうえで、当グループで行える選択肢を整理します。
4. 折り返しのご連絡 担当より内容をご説明し、必要に応じて受診のご案内をします。
ご自身の状況で使える選択肢を、一緒に整理しませんか
※治療効果には個人差があり、すべての患者さまに同様の結果が得られるとは限りません。また、免疫細胞療法には、国内の保険適応や大規模臨床試験で標準治療として確立されていないものも含まれます。本記事で取り上げたcilta-cel(カービクティ)のくすぶり型多発性骨髄腫への使用は国内で承認されておらず、当院で提供している治療でもありません。実際の治療は、リスクとベネフィットを評価し、ご本人の同意のもとで設計します。当グループの治療はすべて自費診療(保険適用外)です。費用は
料金表をご確認ください。
あわせて読みたい
出典
1. Nadeem O, et al. Ciltacabtagene autoleucel in high-risk smoldering multiple myeloma: the CAR-PRISM phase 2 trial. Nature Medicine. 2026;32:2420-2429. DOI: 10.1038/s41591-026-04365-y/ClinicalTrials.gov NCT05767359
2. Jurgens EM, Mailankody S. CAR T cells take on precancers. Nature Medicine. 2026;32:2358-2359. DOI: 10.1038/s41591-026-04473-9
3. Dimopoulos MA, et al. Daratumumab or Active Monitoring for High-Risk Smoldering Multiple Myeloma. New England Journal of Medicine. 2025;392:1777-1788. DOI: 10.1056/NEJMoa2409029
4. Mateos MV, et al. International Myeloma Working Group risk stratification model for smoldering multiple myeloma (SMM). Blood Cancer Journal. 2020;10:102. DOI: 10.1038/s41408-020-00366-3
5. Thorsteinsdóttir S, et al. Prevalence of smoldering multiple myeloma based on nationwide screening. Nature Medicine. 2023;29:467-472. DOI: 10.1038/s41591-022-02183-6
6. Rajkumar SV, et al. International Myeloma Working Group updated criteria for the diagnosis of multiple myeloma. Lancet Oncology. 2014;15:e538-e548. DOI: 10.1016/S1470-2045(14)70442-5