投稿日:2024.5.16/更新日:2026.6.1
📌 この記事でわかること
膵臓がんは「最も治療が難しいがん」の一つとされ、近年の免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)でも単独では十分な効果が得られにくいことが知られています。なぜ膵臓がんは免疫療法に対して抵抗性を示すのか——その理由を理解することは、より効果的な治療戦略を選択するための第一歩です。
本記事では、膵臓がんが免疫療法に対して効果が出にくいとされる6つの主な理由を、腫瘍の特徴や免疫環境の観点から解説します。そして、これらの課題を克服するために当グループが開発した革新的複合がん免疫療法——学術名「iCCI: innovative combination cancer immunotherapy」、患者さま・一般向けの商標名「SynerTri® Immunotherapy」——についてもご紹介します。
膵臓がんの腫瘍は、強い免疫抑制的な腫瘍微小環境(TME: Tumor Microenvironment)を形成しています。膵臓がんの腫瘍組織は、免疫細胞が侵入しにくい構造を形成していることが多く、腫瘍の周囲に免疫細胞の活動を抑制する細胞(制御性T細胞、M2型マクロファージ、骨髄由来抑制細胞MDSCなど)が多く存在します。これにより、免疫系が腫瘍を認識して攻撃する能力が制限されます。膵臓がんは、固形腫瘍の中でも特にTMEによる免疫抑制が強いがん種の一つです。
膵臓がんは「低免疫原性」とされています。これは、膵臓がんが免疫系に対して目立つ抗原を発現しにくいことを意味します。抗原が少ないため、免疫細胞が癌細胞を「異物」として認識しにくく、免疫応答が引き起こされにくいのです。多くの免疫療法は、免疫系が癌細胞をしっかり認識できることが前提ですが、膵臓癌の場合、その認識自体が難しいとされています。実際、膵臓がんの腫瘍変異負荷(TMB: Tumor Mutational Burden)は他のがん種と比較して低い傾向にあり、これが免疫チェックポイント阻害薬の効果が限定的である一因と考えられています。
膵臓がんは非常に密な腫瘍間質(ストローマ)を形成します。これにより、免疫細胞や免疫療法で投与された薬剤が腫瘍内に浸透しにくくなります。ストローマが腫瘍の物理的なバリアとして働き、免疫細胞や薬剤が癌細胞にアクセスできないため、効果が低くなることがあります。この特徴は膵臓がんの「線維化が強い」「硬い腫瘍」という臨床的な特徴とも一致しています。
膵臓がんは異質性(heterogeneity)が高く、遺伝的および分子的な多様性が大きいため、免疫療法が一律に効果を発揮しにくい傾向があります。異なる細胞集団が異なる免疫回避メカニズムを持っているため、単一の免疫療法では腫瘍全体を効果的に攻撃できないことがあります。膵臓がんは特にKRAS遺伝子変異を約90%以上の症例で持ちますが、その他の変異パターンや細胞集団の組成は症例ごとに異なります。
膵臓がんの腫瘍微小環境は、血管新生が不十分で酸素や栄養が不足している場合が多いです。この低酸素環境(hypoxia)は、免疫細胞の機能を低下させる一因となり、免疫療法の効果が制限される要因の一つとなっています。低酸素環境では、T細胞の活性化やエフェクター機能が抑制されることが知られています。
膵臓がんの治療には、従来の化学療法や放射線療法がよく使われますが、これらの治療は免疫系にも影響を与え、免疫療法の効果を阻害する場合があります。たとえば、化学療法によって免疫細胞が抑制されることがあり、これが免疫療法の成功を困難にする要因となることがあります。一方で、適切なタイミング・組み合わせで使用すれば、化学療法は免疫原性細胞死(immunogenic cell death)を誘導し、免疫療法と相乗効果を生む可能性も報告されています。
これらの要因から、膵臓がんに対して免疫療法単独での効果は限定的であるとされています。しかし、近年では膵臓がんにおける免疫療法の効果を高めるための新しい戦略(免疫療法と化学療法や放射線療法の併用、腫瘍微小環境を標的とする治療法の開発など)が模索されており、今後の進展に期待が寄せられています。
当グループ・プレシジョンクリニックグループが開発した革新的複合がん免疫療法——学術名「iCCI」(The innovative combination cancer immunotherapy)、商標名「SynerTri® Immunotherapy」——は、まさに上記の課題を克服するために設計された独自の治療戦略です。
本治療戦略は、膵臓がんの「低免疫原性」「免疫抑制的TME」「密な腫瘍間質」という複合的な課題に対して、3つのアプローチを組み合わせることで効果を引き出すことを目指しています。
iCCI/SynerTri®のもう一つの特徴は、ゲノム解析に基づく個別治療設計です。KRAS変異、CPS・TPSスコア、MMR(ミスマッチ修復)などの分子情報に基づき、患者さま一人ひとりに最適な治療の組み合わせを設計します。膵臓がんの「腫瘍の異質性」という課題に対する、現代医学の答えの一つです。
本治療戦略の詳細については、革新的複合がん免疫療法(The iCCI)についてもあわせてご覧ください。
「膵臓がんの治療で、免疫療法が選択肢になるか知りたい」「標準治療に加えてできることはないか」と考えている方へ。プレシジョンクリニックの無料相談では、現在の診断内容や治療経過をもとに、次のようなことをお話しできます。
受けられます。ただし、膵臓がんは免疫療法に対して抵抗性を示しやすいがん種であるため、免疫療法単独ではなく、化学療法や局所療法との組み合わせ、ゲノム解析に基づく個別治療設計が重要となります。MSI-High/dMMRなどの特定のバイオマーカーを持つ症例では、ペムブロリズマブ等の免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できます。
がん細胞の周囲には、免疫の働きを抑え込む細胞(制御性T細胞、M2型マクロファージ、MDSC等)や免疫を阻害するシグナルが存在し、「免疫抑制的な微小環境」が形成されています。これがあると、免疫細胞ががん細胞を攻撃できません。TME改善とは、こうした免疫抑制状態を緩和し、免疫が本来の力を発揮しやすい状態を目指すアプローチです。当グループでは独自の解析に基づく薬物療法等により、腫瘍微小環境を整えることを目指しています。
iCCIとSynerTri®は同じ治療概念を指しています。「iCCI」(innovative combination cancer immunotherapy)は学術名で、論文や学会発表など科学的な文脈で使用されます。「SynerTri®」は商標名(登録商標)で、患者さま・一般向けの公式ブランド名として使用されます。どちらも、樹状細胞ワクチン療法・免疫チェックポイント阻害薬・局所療法の3本柱を組み合わせる、当グループ独自の治療戦略です。
本治療戦略は、標準治療に加えてさらなる選択肢を求める患者さま、または標準治療が困難な状況にある患者さまを主な対象としています。膵臓がんに限らず、各種の進行がん・難治がんで適応が検討されます。ただし、適応は患者さまの全身状態、過去の治療歴、ゲノム解析結果などにより異なります。詳細は無料相談でご確認ください。
樹状細胞ワクチン療法は4ヶ月・7回投与を1セットとした自由診療です。治療費の詳細は料金表ページをご覧ください。免疫チェックポイント阻害薬や他の治療との組み合わせは、患者さまの状況に応じて個別に治療設計を行います。

【監修者】矢﨑 雄一郎
東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、現在はプレシジョンクリニック東京院長として活躍中。専門分野は一般外科及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。
略歴:
1996/3
東海大学医学部卒業
1996/4
東海大学附属病院消化器外科勤務
2000/11
遺伝子解析企業ヒュービットジェノミクス株式会社入社
監修医師
矢﨑 雄一郎医師
免疫療法・研究開発
東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、東京大学医科学研究所で免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の開発に従事。現在はプレシジョンメディカルケア理事長として活躍中。専門分野は免疫療法及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。