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抗がん剤・分子標的薬

投稿日:2026.5.23/更新日:2026.10.9

ダラクソンラシブ(ラソンク)とは|FDA承認・RAS変異膵臓がん新薬の最新エビデンス完全解説【2026年最新】


ダラクソンラシブ(daraxonrasib/開発コード:RMC-6236/米国販売名:ラソンク/RASONQUE)は、米国Revolution Medicines社が開発した、複数のRAS変異を1剤で標的とする「Pan-RAS(汎RAS)阻害薬」です。これまで「ドラッガブルでない(薬で標的にできない)」とされてきたRAS遺伝子変異を持つがん細胞を直接攻撃する経口薬で、2026年8月26日、米国FDA(食品医薬品局)が転移性膵腺癌に対して正式承認しました。RAS変異を直接標的とする薬としては、膵がんで初の承認です(開発元発表)。ただし日本国内では未承認であり、保険診療での使用はできません(2026年10月時点)。

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この記事でわかること(30秒サマリー)

■ 米国での承認:2026年8月26日にFDAが正式承認(販売名:ラソンク/RASONQUE)。膵がんで初のRAS標的薬(開発元発表)

■ 承認された適応:1つ以上の全身療法を受けた、または多剤併用全身療法の適応とならない成人の転移性膵腺癌。RAS変異の有無は問わない

■ 日本での状況:未承認(2026年10月時点)。保険診療では使用できません

■ 有効性:第III相試験「RASolute 302」で、化学療法と比較し全生存期間を約2倍に延長(RAS G12変異集団で13.2ヶ月 vs 6.6ヶ月、HR 0.40、p=5.9×10⁻¹⁰)

■ 剤形:1日1回経口投与(300mg)

■ ガイドライン:2026年8月19日、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)が診療ガイドラインを緊急改訂し、二次治療以降の推奨として収載

■ 掲載誌:New England Journal of Medicine(NEJM)に最終解析を掲載(2026年5月31日、DOI:10.1056/NEJMoa2605555)

■ 日本でいま検討できる選択肢(治験・入手経路・相談先)→ RAS変異がん専門外来で個別にご説明します

RAS変異がん専門外来

KRAS/RAS変異・ダラクソンラシブについて相談したい方へ

ダラクソンラシブ(RMC-6236)を含むRAS阻害薬については、KRAS変異の種類、治療歴、現在の全身状態、国内外の臨床試験情報を確認したうえで、検討すべき選択肢を整理する必要があります。遺伝子検査の結果や現在の治療状況をふまえ、検討すべき選択肢を一つひとつ丁寧にご相談します。

ダラクソンラシブとは何か?

基本情報

項目 内容
一般名 ダラクソンラシブ(daraxonrasib)
米国販売名 ラソンク(RASONQUE)(2026年8月26日承認)
開発コード RMC-6236
開発会社 Revolution Medicines, Inc.(米国カリフォルニア州)
薬剤クラス RAS(ON) マルチセレクティブ阻害薬(Pan-RAS阻害薬)
投与経路 経口(1日1回)
標準用量 300mg/日
米国での承認状況 2026年8月26日 FDA承認(転移性膵腺癌/1つ以上の全身療法後、または多剤併用療法の適応とならない成人)
日本での承認状況 未承認(2026年10月時点・保険診療での使用不可)
欧州での状況 欧州医薬品庁(EMA)が2026年7月より迅速審査を実施中
その他の対象疾患(試験中) 非小細胞肺がん、大腸がん等のRAS変異がん
FDA指定 Breakthrough Therapy指定(2026年9月14日、未治療の転移性膵腺癌に対する化学療法との併用でも指定)、Orphan Drug指定、National Priority Voucher選定
米国での定価 30日分で39,800ドル(2026年8月、開発元の発表。保険・値引きの適用前)

ラソンク(RASONQUE)とは

ラソンク(RASONQUE)は、ダラクソンラシブの米国での販売名です。一般名がダラクソンラシブ、開発コードがRMC-6236で、3つの名前はすべて同じ薬を指します。2026年8月26日の米国FDA承認にあわせて、この販売名が付きました。

日本国内では未承認で、日本での販売名は決まっていません(2026年10月時点)。本記事では一般名の「ダラクソンラシブ」を主に用い、販売名に触れるときは「ラソンク」と表記します。

ひとことで言うと

ダラクソンラシブは、これまで「治療標的にできない」とされてきたRAS遺伝子変異を、活性型のまま直接ブロックする新しいクラスの分子標的薬です。特に膵がんの90%以上に存在するKRAS遺伝子変異(G12D、G12V、G12Rなど)を、変異の種類を問わず広く阻害できる点が革新的です。

なぜ膵がん治療の歴史を変えるのか

これまでの膵がん治療の限界

膵がん(特に膵管腺癌)は、すべてのがんの中でも最も予後が厳しいがんのひとつです。転移性膵がんの5年生存率は約3%、二次治療以降の標準治療は限られており、化学療法に反応しない患者には選択肢がほとんどありませんでした。

その大きな理由は、膵がんの90%以上で「KRAS遺伝子」に変異があるにもかかわらず、長年にわたりKRAS変異を直接ターゲットにする薬がなかったためです。KRAS変異の中でも、膵がんで最も多いのは「G12D」「G12V」「G12R」というタイプで、肺がんで多い「G12C」とは構造が異なります。

第一世代KRAS阻害薬の限界

2021年以降、ソトラシブ(Lumakras)、アダグラシブ(Krazati)といった「KRAS G12C」を狙う薬が承認されましたが、これらが効くのはG12C変異を持つ患者だけです。膵がん患者でG12C変異を持つのは1%未満で、ほとんどの膵がん患者には恩恵がありませんでした。

ダラクソンラシブの突破口

ダラクソンラシブは、G12C、G12D、G12V、G12R、G13、Q61など、複数のRAS変異を一つの薬でターゲットできる「マルチセレクティブ」設計です。これにより、膵がん患者の約90%に治療の可能性が開かれることになります。

第III相試験「RASolute 302」の詳細結果

試験デザイン

項目 内容
試験名 RASolute 302(NCT06625320)
試験フェーズ 第III相、無作為化、グローバル試験
対象患者 前治療歴のある転移性膵管腺癌(PDAC)患者
登録患者数 約500名
対象変異 KRAS G12D/G12V/G12R など G12変異、wild-typeも含む
介入 ダラクソンラシブ 300mg 1日1回経口 vs 医師選択の標準化学療法
主要評価項目 KRAS G12変異陽性患者における無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)

最終解析の結果(ASCO 2026 Plenary、2026年5月31日発表)

第III相試験RASolute 302の最終解析は、2026年5月31日のASCO Plenary Sessionで発表され、同日New England Journal of Medicine(NEJM)に論文掲載されました(DOI:10.1056/NEJMoa2605555)。発表者はDana-Farber Cancer Institute(ダナファーバーがん研究所)/ハーバード大学のBrian Wolpin医師、学会抄録番号はLBA5です。試験は6カ国59施設で500例を登録(ダラクソンラシブ群248例 vs 化学療法群252例)、データカットオフは2026年2月10日、追跡期間中央値は8.5ヶ月でした。

全生存期間(OS)

主要評価項目であるRAS G12変異集団(500例中459例が該当)と、RAS変異の有無を問わない全体集団(ITT)の両方で、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある延長を示しました。

RAS G12変異集団(ダラクソンラシブ228例 vs 化学療法231例)

  • OS中央値:13.2ヶ月 vs 6.6ヶ月
  • ハザード比(HR):0.40(95%CI 0.30〜0.54)
  • p値:5.9×10⁻¹⁰(死亡リスク60%低下)

全体集団(ITT)

  • OS中央値:13.2ヶ月 vs 6.7ヶ月、HR 0.40

RAS G12変異集団と全体集団でほぼ同一の結果(ともにOS 13.2ヶ月、HR 0.40)が得られた点が重要です。これはダラクソンラシブが変異型・野生型を問わず幅広くRASを標的とするメカニズムの妥当性を裏づける結果です。

無増悪生存期間(PFS)

  • RAS G12変異集団:7.3ヶ月 vs 3.5ヶ月
  • 全体集団:7.2ヶ月 vs 3.6ヶ月

いずれも化学療法群の約2倍で、病勢進行までの時間が大幅に延長しました。

奏効率(ORR)・QOL(生活の質)

奏効率に加え、患者報告によるQOL(生活の質)も化学療法と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示しました。延命だけでなく「生活の質を保ちながら長く生きられる」可能性を示した点は、患者さまとご家族にとって特に重要です。ダラクソンラシブは1日1回の経口薬であり、点滴を要する化学療法と比べ通院・身体的負担の面でも利点があります。

このOS・PFSの結果は、いずれも今回の最終解析で確定値となりました。「HR 0.40」という数値は膵がんの臨床試験では極めて稀な大きな差で、複数の膵がん専門医がこの結果を「practice-changing(診療を変える)」と評価しています。なお、変異タイプ別(G12D/G12V/G12R個別)の詳細なサブグループ解析値については、NEJM本文および学会スライドでの確認が必要であり、本記事では確定値が公表され次第追記します。

速報の詳細は 【ASCO 2026速報】ダラクソンラシブ第III相Full Data公開 でも解説しています。

2026年6月 追記|国際的な評価

RASolute 302の結果は、その後 Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology 誌および Nature Reviews Clinical Oncology 誌でも研究ハイライトとして取り上げられ、膵がん治療における重要な進展として国際的に注目されています。

出典:Ray K. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2026 Jun 12. DOI:10.1038/s41575-026-01222-8 / Sidaway P. Nat Rev Clin Oncol. 2026 Jun 12. DOI:10.1038/s41571-026-01176-5

膵がんでの開発パイプライン(第III相試験)

ダラクソンラシブは、膵がんのさまざまな治療段階を対象に、複数の第III相試験が国際的に進行しています。今回結果が示されたのは「既治療」の段階ですが、より早期の段階でも評価が進んでいます。膵がんのあらゆるステージをカバーしようとする開発戦略がとられている点が特徴です。

試験名 対象(治療段階) デザイン 状況
RASolute 302 既治療の転移性膵がん(二次治療以降) ダラクソンラシブ vs 化学療法 結果公表済み(本記事の通り)
RASolute 303 未治療の転移性膵がん(一次治療) ダラクソンラシブ単剤/ダラクソンラシブ+GnP(化学療法)/GnP単独の3群比較 進行中(募集中)
RASolute 304 切除後の膵がん(術後補助療法) ダラクソンラシブ vs 経過観察 進行中(募集中)
RASolute 309 未治療のKRAS G12D変異 転移性膵がん(一次治療) ゾルドンラシブ(RMC-9805)+ダラクソンラシブ vs GnP(ゲムシタビン+ナブパクリタキセル) 進行中(2026年8月開始・2026年10月5日に初回投与・募集中)
RASolve 301 RAS変異 非小細胞肺がん(参考) ダラクソンラシブ vs ドセタキセル 進行中(募集中)

このように、膵がんでは「一次治療(RASolute 303)」「既治療(RASolute 302)」「術後補助療法(RASolute 304)」という主要な治療段階すべてで第III相試験が走っています。特にRASolute 303は、単剤・化学療法併用・化学療法単独の3群を比較する設計で、「ダラクソンラシブを単独で使うべきか、化学療法と組み合わせるべきか」という臨床上の問いに、直接答える設計です。なお、RASolute 302以外の試験はいずれも結果が出ていないため、有効性はまだ確定していません(2026年10月時点)。今後の結果公表が注目されます。

2026年9月 追記|一次治療へ前進

RASolute 309(NCT07805954)は、未治療のKRAS G12D変異転移性膵腺癌を対象に、ゾルドンラシブ+ダラクソンラシブとGnP療法を比較する第III相試験です(2026年8月開始・2026年10月5日に初回投与〈開発元発表〉・400例・主要評価項目はPFSおよびOS)。この試験の開始により、両薬の併用開発は一次治療領域へ進みました。ただし、試験結果は未公表であり、一次治療としての有効性・安全性は確立していません。ゾルドンラシブ・ダラクソンラシブとも日本国内では未承認です。

出典:ClinicalTrials.gov. NCT07805954. A Phase 3, Randomized, Open-Label Study of Zoldonrasib Plus Daraxonrasib Versus Gemcitabine and Nab-Paclitaxel as First-Line Treatment in Patients With Metastatic KRAS G12D-Mutated Pancreatic Adenocarcinoma. https://clinicaltrials.gov/study/NCT07805954/Revolution Medicines, Inc. Begins Treating Patients in Phase 3 RASolute 309 Trial. October 5, 2026. 開発元の発表

2026年8月 追記|ESMO診療ガイドラインへの収載

2026年8月19日、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)が転移性膵がん診療ガイドラインの緊急改訂版(Express Update)を発表し、ダラクソンラシブを推奨として収載しました。通常の改訂サイクルを待たずに緊急で更新される「Express Update」という形式自体が、この結果のインパクトの大きさを示しています。

ESMOの推奨内容は、化学療法後に病勢進行したRAS G12変異陽性の転移性膵管腺癌で、全身状態が良好な患者(ECOG PS 0-1)に対するダラクソンラシブ単剤療法です(推奨度 [I, A])。あわせて、切除不能膵がんにおける遺伝子プロファイリングに関する新たな推奨と、転移性膵がんの治療アルゴリズムの更新も示されました。

出典:Conroy T, Ducreux M; on behalf of the ESMO Guidelines Committee. ESMO Clinical Practice Guideline Express Update on daraxonrasib in the treatment of metastatic pancreatic cancer. Ann Oncol. Published online August 19, 2026. DOI:10.1016/j.annonc.2026.08.003

作用機序:Pan-RAS(ON)阻害薬とは

RAS遺伝子とがんの関係

RAS遺伝子は、細胞の増殖シグナルを制御する「スイッチ」のような役割を持つ遺伝子です。RAS変異が起こると、このスイッチが「常時ON」状態になり、細胞が無秩序に増殖してがん化します。RAS変異はヒトのがん全体の約30%に存在し、膵がんでは90%以上、肺がんで30%、大腸がんで45%程度に見られます。

正常なRAS必要な時だけ ON になるRAS終われば OFF に戻る正常な細胞分裂
変異したRASスイッチが戻らなくなる常時ONRASOFF にできないがん細胞が無秩序に増殖
RAS阻害薬は、この「常時ON」を直接ねらって止める
図:RAS変異による「常時ON」と細胞増殖の模式図/プレシジョンクリニック作成

「OFF」を狙うか、「ON」を狙うか

従来の第一世代KRAS阻害薬(ソトラシブ等)は、RASが不活性型(GDP結合型、OFF状態)に戻った瞬間に結合する設計でした。これはG12C変異特有のシステイン残基に共有結合する仕組みのため、他の変異タイプには使えませんでした。

一方、ダラクソンラシブは、RASが活性型(GTP結合型、ON状態)のときに結合する設計です。サイクロフィリンA(CypA)というシャペロンタンパクと「三者複合体(tri-complex)」を形成し、RASの下流シグナル経路(RAF–MEK–ERK経路およびPI3K–AKT経路)への伝達を遮断します。

カバーする変異の幅

前臨床試験では、以下の変異に対して有効性が示されています:

  • KRAS G12C/G12D/G12V/G12R/G12A/G12S
  • KRAS G13D/G13Cなど G13変異
  • KRAS Q61X
  • NRAS/HRAS変異(前臨床のみ)
  • 野生型RAS(一部影響)

ただし臨床試験で確実に有効性が確認されているのは、現時点でKRAS G12D/G12V/G12Rが中心です。NRAS/HRASに関する臨床エビデンスはまだ限定的です。

対象となる患者・KRAS変異の確認方法

FDAが承認した適応(2026年8月26日)

FDAが承認した適応は、以下の通りです。

1つ以上の全身療法を受けた成人、または多剤併用全身療法の適応とならない成人の、転移性膵腺癌

ここで重要な点が2つあります。

ひとつは、FDAの承認適応にRAS変異の有無による限定がないことです。第III相試験RASolute 302は、RAS変異の有無を問わず登録され、RAS G12変異集団と全体集団の両方でほぼ同一の結果(ともにOS中央値13.2ヶ月、HR 0.40)が得られました。この結果を反映し、承認された適応は変異の型による限定を受けていません。ソトラシブ等の第一世代KRAS G12C阻害薬が「特定の変異を持つ患者のみ」を対象とするのとは、性格が異なります。

もうひとつは、「多剤併用全身療法の適応とならない」患者が含まれることです。これは、体力面などの理由でFOLFIRINOX等の多剤併用化学療法に耐えられないと判断される患者について、前治療歴がなくても対象となり得ることを意味します。

一方で、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のガイドライン推奨は、RAS G12変異陽性かつECOG PS 0-1に限定されており、FDAの承認適応より狭い範囲を推奨しています。同じエビデンスに基づきながら、規制当局の承認範囲と学会の推奨範囲が異なる形になっており、実際の臨床でどの範囲の患者に用いるかは、今後の実診療データの蓄積を待つ部分があります。

なお、いずれも米国および欧州での話であり、日本国内ではダラクソンラシブは承認されていません(2026年10月時点)。

KRAS変異検査の方法

KRAS変異の有無を確認するには、以下のいずれかの検査が必要です:

  • がん組織遺伝子パネル検査(FoundationOne CDx、OncoGuide NCCオンコパネルなど)
  • リキッドバイオプシー(Guardant360、FoundationOne Liquid CDxなど、血液から遺伝子変異を検出)

これらは保険適用される条件・施設が決まっています。膵がんの場合、標準治療を一定期間行った後の段階で遺伝子パネル検査が保険適用されます。

KRAS変異の検査について、
ご相談してみませんか?

どのKRAS変異があるかは、遺伝子パネル検査や血液で調べるリキッドバイオプシーで確認できます。
当院では検査の手配から結果の読み解きまで担当医が行い、いま受けられる治療の選択肢もあわせてご説明します。
ご相談は無料です。

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    副作用と安全性プロファイル

    これまで報告されている主な副作用

    第I/II相試験および第III相試験で報告された主な副作用は以下の通りです。

    • 皮疹(ざ瘡様皮疹)
    • 口内炎
    • 悪心・嘔吐
    • 下痢
    • 疲労感
    • 食欲不振
    • 肝機能障害

    前臨床マウス実験では「RAS完全阻害は致死的に近い毒性」と予測されていましたが、臨床試験では「忍容性は概ね良好(manageable safety profile)」と報告されています。

    第III相試験RASolute 302で報告された安全性データは以下の通りです。化学療法群と比較して、重い副作用の頻度がむしろ低いことが特徴です。

    項目 ダラクソンラシブ群 化学療法群
    Grade 3以上の治療関連有害事象 43.6% 57.5%
    重篤な治療関連有害事象 10.8% 18.7%
    副作用による治療中止 1.2% 11.2%

    副作用による治療中止率が1.2%と、化学療法群の11.2%に対して約9分の1にとどまった点は、実際の治療継続性を考えるうえで重要な意味を持ちます。

    全Gradeで頻度の高かった副作用は、皮疹(85%)、下痢(58%)、口内炎(53%)、悪心(46%)、嘔吐(37%)でした。Grade 3以上では皮疹13.7%、口内炎12.0%と、皮膚・粘膜の症状がダラクソンラシブ群で多くみられます。一方、化学療法群ではGrade 3以上の好中球減少27.6%、貧血16.4%、疲労5.6%が多く、副作用の「質」が両群で異なります。

    ダラクソンラシブの主な毒性は皮膚に現れる皮疹で、その出現頻度や分布(特に頭皮)は、抗EGFR抗体薬などでみられる皮疹とは異なるパターンをとるとESMOガイドラインは指摘しています。適切な皮膚症状の管理が、治療を継続するうえでの鍵になります。

    注意が必要な点

    2026年5月31日のASCO Plenaryで最終解析が公開され、安全性プロファイルも「忍容性は概ね良好で、新たな安全性シグナルは認められなかった」と報告されました。一方で、長期投与時の毒性プロファイルについては、今後のデータ蓄積が引き続き必要です。専門医からは「毒性管理についてはまだ学ぶべきことがある」とのコメントも出ています。

    米国での承認と、日本での見通し

    米国:2026年8月26日にFDAが正式承認

    2026年8月26日、米国FDA(食品医薬品局)は、ダラクソンラシブを販売名RASONQUEとして、転移性膵腺癌に対して正式に承認しました。RAS変異を直接標的とする薬としては、膵がんで初の承認です(開発元発表)。

    審査は、FDA長官の「National Priority Voucher(国家優先バウチャー)」パイロットプログラムの下で行われました。新薬承認申請(NDA)が受理されたのが2026年7月22日で、承認までわずか約1ヶ月。本来の審査期限より6.5ヶ月早い決定でした。膵がんという予後の厳しい疾患における未充足の医療ニーズの大きさが、この異例の速さに反映されています。

    欧州:EMAが迅速審査を実施中

    欧州医薬品庁(EMA)は2026年7月からダラクソンラシブの迅速審査(accelerated assessment)を開始しています。また前述の通り、2026年8月19日にはESMOが診療ガイドラインを緊急改訂し、二次治療以降の推奨として収載しました。

    日本での状況(2026年10月時点)

    2026年10月現在、ダラクソンラシブは日本国内では承認されておらず、保険診療での使用はできません。米国での承認は、日本での使用を意味するものではありません。

    日本でダラクソンラシブ(ラソンク)の使用を検討したい方は、当院の RAS変異がん専門外来 で、KRAS変異の型・国内外の治験の有無・入手経路(医師の責任のもとでの個人輸入)と費用・リスクを個別にご説明します。

    日本国内での承認には、国内での申請手続きや、場合によっては国内臨床試験データが必要となります。一般に、FDA承認から日本での承認までには1〜3年程度を要することが多く、2027年〜2029年頃の承認が一つの見通しとして考えられます。ただしこれはあくまで一般的な傾向からの推論であり、実際の時期は今後の申請状況によって変わります。膵がんという疾患の重篤性や、国際共同治験(RASolve 301は ClinicalTrials.gov に国内22施設が登録されています(2026年10月8日時点・募集状況は施設ごとに異なります))の進展によっては、より早まる可能性もあります。

    なお、Revolution Medicines社は2026年8月10日、BeOne Medicines社にアジアの一部地域での開発・販売権を供与すると発表しました。この発表では日本と韓国は対象外とされ、同社が権利を保持すると明記されています(開発元の発表)。日本での承認申請の時期や販売体制は、2026年10月時点で公表されていません。

    現時点で日本の患者が検討しうる選択肢

    1. 国内臨床試験への参加:日本でもグローバル試験の一部が実施されています。最新の臨床試験情報はjRCT(臨床研究等提出・公開システム)やClinicalTrials.govで確認できます。
    2. 海外での治療:米国では承認薬となったため、現地での処方が制度上は可能になりました。ただし渡航・滞在・医療費の負担が大きく、現地医療機関の受け入れ体制、保険の適用範囲など、確認すべき事項が多岐にわたります。

    当院の実例

    KRAS変異を確認し、分子標的薬と免疫療法の併用で腫瘍マーカー(CA19-9)が15,105から1,427へ低下した膵臓がんステージⅣ・73歳男性

    多発肝転移・肺転移・腹膜播種を伴う膵頭部がんステージⅣの73歳男性です。標準治療(FOLFIRINOX)の選択肢がなくなり緩和ケアへ移行していましたが、ご本人とご家族の希望で当院を受診されました。初診時は日に日に体力が落ち、自立歩行での通院もできない状態でした。遺伝子パネル検査でKRAS変異を認め、これに基づく分子標的薬を準備しつつ、樹状細胞ワクチン療法・免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ)・放射線療法を併用しました。上昇し続けていた腫瘍マーカーCA19-9は15,105から1,427へ低下し、食欲は約30%から約80%へ回復、腹膜播種による腹壁のしこりと痛みは消失しました。

    症例の詳細を見る →

    ※この症例で用いた分子標的薬はダラクソンラシブ(日本未承認)ではありません。個別の症例であり、治療効果には個人差があります。同じ結果をお約束するものではありません。

    当院では、RAS変異がんの治療選択肢に関するご相談を承っています。最新の臨床試験情報、遺伝子検査(KRAS変異の確認)、標準治療と免疫療法を組み合わせた治療戦略など、患者さまお一人おひとりの状況に応じた情報提供と治療プランのご提案を行っています。ダラクソンラシブをはじめとするRAS阻害薬の動向についても継続的に追跡しており、ご不明な点はお気軽にご相談ください。

    RAS変異がん専門外来

    変異タイプ・治療歴によって、選択肢は異なります

    ダラクソンラシブをはじめとするRAS阻害薬は、変異のタイプ(G12D/G12V/G12R等)やこれまでの治療歴によって、検討できる選択肢が異なります。プレシジョンクリニックグループの日本初のRAS変異がん専門外来では、遺伝子検査の結果をもとに、承認薬から研究段階の選択肢まで一人ひとりの状況に合わせて整理しています。

    価格・費用(米国の定価と日本での扱い)

    結論(30秒)

    • 米国の定価(WAC):30日分 39,800ドル(2026年8月26日・開発元発表)。年間では約477,600ドル
    • 日本円換算:30日分 約625万円(1ドル157円・2026年9月29日時点。為替で変わります)
    • 米国では、適格な民間保険加入者は自己負担0ドルになりうる支援プログラムがあります(定価=患者負担ではありません)
    • 日本では未承認のため、薬価はありません。保険診療での使用もできません(2026年10月時点)
    • 当院での費用:ご相談ください(無料医療相談でお受けし、入手経路・費用・リスクは相談時に個別にご説明します)

    米国の定価は「30日分 39,800ドル」

    開発元の Revolution Medicines 社は、FDA承認当日の2026年8月26日に、ラソンク(RASONQUE)の卸売取得価格(WAC)を30日分 39,800ドルと発表しました。1日1回の経口薬なので、30日分が1か月分にあたります。

    期間 定価(米ドル) 円換算(1ドル157円)
    30日分(1か月) 39,800ドル 約625万円
    90日分(3か月) 119,400ドル 約1,875万円
    180日分(6か月) 238,800ドル 約3,749万円
    360日分(12か月) 477,600ドル 約7,498万円

    ※ 円換算は2026年9月29日時点の為替(1ドル=157円)による目安で、為替により変動します。第III相試験の治療期間中央値は公表されておらず、実際の投与期間は患者さんごとに異なります。

    定価と自己負担は別のもの

    米国の薬価は「定価(WAC)」と「患者の自己負担」が大きく異なります。開発元は、適格な民間保険加入者について自己負担が0ドルになりうる患者支援プログラム((ON)Path)を用意していると説明しています。公的保険(メディケア等)や無保険の場合の負担は別途決まります。上の表は「薬の定価」であり、米国で治療を受ける患者さんが実際に払う額ではありません。

    日本では「薬価なし・保険適用なし」

    ダラクソンラシブ(ラソンク)は日本国内で未承認のため、日本の薬価は存在せず、保険診療で使うこともできません(2026年10月時点)。日本で承認された場合の薬価と保険適用の範囲は、承認後に中央社会保険医療協議会(中医協)で決まります。同じKRAS阻害薬でも、国内で承認済みのソトラシブ(KRAS G12C・非小細胞肺がん/大腸がん)には薬価があり保険が使えますが、ダラクソンラシブは対象の変異も承認状況も異なるため、費用を単純に比べることはできません。

    米国で承認薬となったことで、制度上は渡航して現地で処方を受ける選択肢が生まれましたが、薬代に加えて渡航・滞在・現地医療機関の費用がすべて自己負担となり、現地の受け入れ体制や保険の適用範囲など確認事項が多くあります。個人輸入は医師の責任と患者さんの自己負担のもとで行われるもので、国内未承認の医薬品は医薬品副作用被害救済制度の対象外です。

    当院での費用

    ダラクソンラシブ(ラソンク)は国内未承認の医薬品です。ご使用をご検討の方は、まず無料医療相談でご相談ください。入手経路(医師の責任のもとでの個人輸入)・費用・リスク(副作用、および国内未承認薬は医薬品副作用被害救済制度の対象外であること)は、KRAS変異の型・治療歴・全身状態を確認したうえで、相談時に個別にご説明します。当院で行う他の治療(KRAS変異の確認、標準治療・免疫療法との組み合わせ)の費用は料金表をご確認ください。

    治療を検討する前に知っておいていただきたいこと

    ダラクソンラシブは画期的な可能性を秘めた薬ですが、科学者の目線から冷静に整理すべき限界点もあります。

    変異タイプ別の詳細サブグループ解析は精査が必要

    2026年5月31日のASCO Plenaryで最終解析(Full Data)が公開され、OS・PFS・QOLの全体像が明らかになりました。一方で、変異タイプ別(G12D vs G12V vs G12R)で有効性に差があるかどうかの詳細なサブグループ解析値は、NEJM本文や学会スライドでの精査が必要な段階です。事前には「サブグループ間で効果が一貫していれば多選択的メカニズムの妥当性が裏づけられ、ばらつきがあればG12D選択的なゾルドンラシブを優先すべきという議論につながる」と指摘されていました。RAS G12集団とITT集団のOSがほぼ同一だったことから、現時点では集団レベルで一貫した効果と読めますが、変異別の個別数値は確定値の確認が必要です(断定は避けます)。

    「Pan-RAS」とはいえ変異別の有効性差は未確定

    前臨床試験では複数のRAS変異に対する有効性が示されていますが、臨床的に「G12のどのタイプにも等しく効く」のか、変異タイプによって反応性が異なるのかは、現時点で確定的に言えません。

    野生型RAS阻害による正常細胞への影響

    ダラクソンラシブは変異型だけでなく野生型RASにも結合します。短期的には忍容性が良好でしたが、長期投与時の慢性毒性は引き続き注視が必要です。

    耐性メカニズムの未解明

    分子標的薬では治療開始から半年〜1年程度で耐性が出現することが知られています。ダラクソンラシブに対する耐性メカニズム(二次変異、バイパス経路活性化など)はまだ解明途上で、耐性後の治療戦略も今後の課題です。

    コストの問題(米国での価格)

    米国でのラソンク(RASONQUE)の定価は、30日分で39,800ドルです(2026年8月、開発元の発表)。1ドル157円で換算すると約625万円です(2026年9月29日時点の為替)。保険や値引きを適用する前の価格で、実際の自己負担額とは異なります。12か月分では約7,500万円にあたります。日本で承認された場合の薬価収載・保険適用の範囲は、承認後に改めて決定されます。価格の詳細(期間別の換算・自己負担との違い・日本での扱い)は 価格・費用 をご覧ください。

    KRAS標的樹状細胞ワクチン療法との相乗効果

    ダラクソンラシブのような分子標的薬と、樹状細胞ワクチン療法(DCT)や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)などの免疫療法を組み合わせる戦略は、現在世界中で研究されている重要なテーマです。プレシジョンクリニックグループでは、特に「KRAS変異」そのものを標的とした樹状細胞ワクチン療法に注力しており、将来的にダラクソンラシブとの相乗効果を狙った治療戦略を構想しています。

    なぜ免疫療法との併用が注目されるのか

    RAS変異がん細胞は、増殖能だけでなく「免疫から逃れる仕組み(免疫回避)」を強く持っていることが知られています。ダラクソンラシブによってRASシグナルが遮断されると、以下のような変化が起こる可能性が報告されています:

    • 腫瘍微小環境(TME)の「冷たい腫瘍(cold tumor)」から「熱い腫瘍(hot tumor)」への変化
    • がん抗原の提示増加によるT細胞認識の改善
    • 免疫抑制細胞(MDSC、Treg等)の機能低下

    これらの変化により、樹状細胞ワクチン療法(DCT)や免疫チェックポイント阻害薬の効果が増強される可能性が示唆されています。

    KRAS変異を標的とした樹状細胞ワクチン療法とは

    樹状細胞ワクチン療法は、患者ご自身の血液から樹状細胞(免疫の司令塔となる細胞)を採取し、体外でがん抗原を学習させ、再び体内に戻すことで、がん特異的なT細胞免疫を誘導する治療法です。

    近年、変異KRASタンパクの一部(変異ペプチド)が「ネオアンチゲン(新生抗原)」として強力な免疫原性を持つことが明らかになってきました。特にG12D、G12V、G12R変異由来のペプチドは、特定のHLA型と組み合わせることで、T細胞による腫瘍認識を強く誘導できる可能性が、複数の査読論文で報告されています(Wang QJ et al., Cancer Immunol Res 2016;Tran E et al., NEJM 2016;Leidner R et al., NEJM 2022)。

    プレシジョンクリニックグループでは、これらのエビデンスに基づき、KRAS変異特異的なネオアンチゲンを標的とした樹状細胞ワクチン療法に力を入れています。患者ご自身のKRAS変異タイプとHLA型を解析し、最適なペプチド設計により、がん細胞だけを精密にターゲットする「個別化ネオアンチゲンワクチン」のアプローチを実践しています。

    ダラクソンラシブとの相乗効果を狙う戦略

    ダラクソンラシブが日本で承認された将来、同じくKRAS変異を標的とする樹状細胞ワクチン療法との併用は、理論上、以下のような相乗効果を見込んでいます:

    治療法 主な作用 強み 限界
    ダラクソンラシブ(分子標的薬) KRASシグナル経路を直接遮断 即効性、強力な腫瘍縮小効果 耐性出現の懸念、薬を止めると再増殖
    KRAS標的 樹状細胞ワクチン療法 変異KRAS特異的T細胞免疫を誘導 免疫記憶による長期効果、耐性クローンへの対応 効果発現に時間を要する、単独では腫瘍縮小が緩やか
    併用戦略 シグナル遮断+免疫誘導 即効性と持続性の両立、耐性予防 臨床エビデンスは今後の研究課題

    具体的には、ダラクソンラシブによる腫瘍縮小と免疫学的「ホット化」のタイミングに合わせて、KRAS標的樹状細胞ワクチンを投与することで、変異KRASに対する特異的T細胞免疫を成立させ、薬剤耐性出現後も腫瘍制御を継続する──このような戦略が、プレシジョンクリニックグループが構想する次世代の複合的免疫療法(iCCI: innovative Combination Cancer Immunotherapy)の核となります。

    ※注意事項:上記の併用戦略は、現時点では理論的・科学的根拠に基づく「将来構想」です。ダラクソンラシブ(ラソンク)は日本未承認の医薬品です。ご使用をご検討の方は無料医療相談でご相談ください(入手経路・費用・リスクは相談時に個別にご説明します)。KRAS標的樹状細胞ワクチン療法は、化学療法・標準治療と組み合わせた自由診療として実施可能です。

    個別化医療としての位置づけ

    プレシジョンクリニックでは、患者一人ひとりのKRAS変異の種類(G12D/G12V/G12R等)、HLA型、TME(腫瘍微小環境)の状態を詳細に解析し、最適なネオアンチゲン設計と免疫療法プランを構築しています。

    標準治療(化学療法・分子標的薬)と樹状細胞ワクチン療法を組み合わせる「複合的免疫療法(iCCI)」のアプローチは、それぞれの治療法の長所を活かしつつ、単独治療では届かない領域をカバーする戦略として注目されています。ダラクソンラシブのような分子標的薬が日本で承認された後は、こうした併用戦略の幅は、さらに広がると私たちは見ています。

    よくある質問(FAQ)

    Q1. ダラクソンラシブはどんな患者に使えますか?

    米国では2026年8月26日にFDAが承認し、1つ以上の全身療法を受けた、または多剤併用全身療法の適応とならない成人の転移性膵腺癌が適応となりました。この適応にRAS変異の有無による限定はありません。一方、ESMO(欧州臨床腫瘍学会)のガイドラインは、RAS G12変異陽性かつ全身状態良好(ECOG PS 0-1)の患者への単剤療法を推奨しており、承認適応より狭い範囲を推奨しています。なお日本国内では未承認のため、保険診療での使用はできません(2026年10月時点)。肺がん・大腸がん・一次治療の膵がんについては、現在も第III相試験が進行中です。

    Q2. ダラクソンラシブは日本で使えますか?

    2026年10月現在、日本では未承認であり、保険診療での使用はできません。米国では2026年8月26日にFDAが承認しましたが、これは日本での使用を意味しません。日本での承認時期については公式発表がなく、一般的な傾向からは2027年〜2029年頃が一つの目安になりますが、これは推論であり確定的なものではありません。

    日本での相談先:RAS変異がん専門外来

    Q3. ダラクソンラシブはpan-RASなのでKRAS G12のどの変異でも効きますか?

    前臨床試験ではG12C、G12D、G12V、G12R、G12A、G12Sを含む複数のG12変異に対して有効性が確認されています。臨床試験では特にG12D/G12V/G12Rでの有効性データが揃っています。2026年5月31日のASCO Plenaryで公開された最終解析では、RAS G12変異集団と全体集団でほぼ同一の全生存期間(ともに13.2ヶ月、HR 0.40)が示され、集団レベルでは一貫した効果がうかがえます。ただし、G12D/G12V/G12R個別の詳細なサブグループ解析値については、引き続き精査が必要です。

    Q4. 副作用はどの程度ですか?

    第III相試験RASolute 302では、Grade 3以上の治療関連有害事象はダラクソンラシブ群43.6%、化学療法群57.5%で、重い副作用はむしろ化学療法より少ない結果でした。副作用による治療中止も1.2%対11.2%と大きな差があります。全Gradeで多いのは皮疹(85%)、下痢(58%)、口内炎(53%)、悪心(46%)、嘔吐(37%)です。主な毒性は皮膚症状で、頭皮を含む分布は抗EGFR抗体薬の皮疹とは異なるパターンとされます。長期投与時の安全性については、今後のデータ蓄積が引き続き必要です。

    Q5. ソトラシブやアダグラシブとの違いは?

    ソトラシブ・アダグラシブは「KRAS G12C」のみを対象としますが、ダラクソンラシブはG12C、G12D、G12V、G12Rなど複数のRAS変異を一つの薬でターゲットできる点が大きく異なります。膵がんではG12Cが1%未満であるため、ダラクソンラシブの方が膵がん患者の多数(約90%)に適用可能です。

    Q6. 樹状細胞ワクチン療法との併用は可能ですか?

    ダラクソンラシブが日本で承認されていない現時点では併用治療の実施は困難ですが、メカニズム的には免疫療法との相乗効果が強く期待される組み合わせです。プレシジョンクリニックグループではKRAS変異そのものを標的とした樹状細胞ワクチン療法に注力しており、ダラクソンラシブによるシグナル遮断効果と、樹状細胞ワクチンによる変異KRAS特異的T細胞免疫誘導を組み合わせることで、即効性と持続性を両立する複合的免疫療法(iCCI)戦略を構想しています。

    Q7. KRAS変異検査はどこで受けられますか?

    がん遺伝子パネル検査(FoundationOne CDx、OncoGuide NCCオンコパネル等)はがんゲノム医療中核拠点病院・連携病院で実施されています。リキッドバイオプシー(Guardant360)は当院で実施可能です。主治医または私たちにご相談ください。

    Q8. ダラクソンラシブはFDAに承認されましたか?

    はい。2026年8月26日、米国FDAが販売名RASONQUEとして転移性膵腺癌に対して正式承認しました。RAS変異を直接標的とする薬としては、膵がんで初の承認です(開発元発表)。審査はFDA長官のNational Priority Voucherパイロットプログラムの下で行われ、本来の審査期限より6.5ヶ月早い決定でした。承認の根拠は第III相試験RASolute 302で、その詳細は2026年5月31日のASCO Plenary Session(学会抄録番号LBA5)で発表され、同日New England Journal of Medicineに論文掲載されました。詳細は【ASCO 2026速報】の記事でも解説しています。ただし日本国内では未承認です。

    Q9. ダラクソンラシブはどこの会社が開発しましたか?

    ダラクソンラシブは、米国カリフォルニア州レッドウッドシティに本社を置くRevolution Medicines, Inc.(レボリューション・メディシンズ社)が開発した薬剤です。同社はRAS遺伝子変異を標的とした次世代阻害薬の開発に特化した創薬ベンチャーで、NASDAQ上場企業(ティッカー:RVMD)です。2026年8月10日に発表されたBeOne Medicines社との提携では、日本は対象地域に含まれず、Revolution Medicines社が権利を保持しています。日本での承認申請の時期や販売体制は公表されていません(2026年10月時点)。

    Q10. ダラクソンラシブ(ラソンク)の価格・費用はどのくらいですか?

    米国でのラソンク(RASONQUE)の定価は、30日分で39,800ドルです(2026年8月、開発元の発表)。1ドル157円で換算すると約625万円です(2026年9月29日時点の為替)。保険や値引きを適用する前の価格で、実際の自己負担額とは異なります。日本での薬価・保険適用は、国内承認後に改めて決定されます。費用についてのご相談は、無料医療相談でもお受けしています。

    Q11. 「ラソンク」「RASONQUE」とはどの薬のことですか?

    RASONQUE(ラソンク)は、ダラクソンラシブ(daraxonrasib)の米国での販売名です。2026年8月26日のFDA承認に伴って付けられた商品名で、有効成分はダラクソンラシブ(開発コード RMC-6236)です。日本語では「ラソンク」「ラゾンク」などと表記されることがありますが、日本での販売名は決まっていません(日本国内は未承認のため)。本記事では、一般名の「ダラクソンラシブ」を主に用いています。

    Q12. ラソンク(ダラクソンラシブ)は最初の治療(一次治療)でも使えますか?

    米国で承認された適応は、1つ以上の全身療法を受けた方、または多剤併用全身療法の適応とならない方です。未治療の方への化学療法との併用は、第III相試験「RASolute 303」で検証中で、有効性と安全性は確立していません。2026年9月14日、この併用は米国FDAの画期的治療薬(Breakthrough Therapy)に指定されました。日本国内では未承認です。

    まとめ

    ダラクソンラシブ(RMC-6236/米国販売名 ラソンク/RASONQUE)は、膵がん患者の90%以上に存在するKRAS変異を直接ターゲットにできるPan-RAS阻害薬です。第III相試験では化学療法と比較して全生存期間を約2倍に延長するという、膵がん治療では極めて稀な大きな効果が示されました。

    2026年8月26日、米国FDAがこの薬を正式承認しました。RAS変異を直接標的とする薬としては膵がんで初の承認(開発元発表)であり、審査期限より6.5ヶ月早い決定でした。2026年8月19日にはESMOが診療ガイドラインを緊急改訂して推奨に収載し、欧州でもEMAによる迅速審査が進行中です。膵がん治療は、KRASを標的とする時代に入りました。

    ただし、日本国内では現時点で未承認であり、保険診療での使用はできません。日本での承認時期は未定です。

    膵がんと診断された方、ご家族の方は、以下のステップをおすすめします:

    1. 主治医とご自身のKRAS変異の有無について話し合う
    2. がん遺伝子パネル検査(保険適用条件下)を検討する
    3. 最新の臨床試験情報(jRCT、ClinicalTrials.gov)を確認する
    4. 標準治療と免疫療法の併用など、複合的な治療戦略を専門医に相談する

    当院では、最新のがん免疫療法・分子標的治療に関する無料医療相談を受け付けております。KRAS変異検査の結果や標準治療の経過を踏まえた個別化治療プランについて、お気軽にお問い合わせください。

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      プレシジョンクリニックグループでは、KRAS変異を標的とした樹状細胞ワクチン療法・免疫チェックポイント阻害薬・腫瘍微小環境(TME)の調整など、患者さまお一人おひとりに最適化された複合的がん免疫療法をご提案しています。ダラクソンラシブをはじめとするRAS阻害薬の動向も継続的に追跡しています。遺伝子検査の結果や現在の治療状況をふまえ、検討すべき選択肢を一つひとつ丁寧にご相談します。

      参考文献・一次情報

      1. U.S. Food and Drug Administration. FDA approves daraxonrasib for metastatic pancreatic adenocarcinoma. August 26, 2026.
        → FDA公式発表を読む(承認)
      2. Conroy T, Ducreux M; on behalf of the ESMO Guidelines Committee. ESMO Clinical Practice Guideline Express Update on daraxonrasib in the treatment of metastatic pancreatic cancer. Ann Oncol. Published online August 19, 2026. DOI:10.1016/j.annonc.2026.08.003
        → ESMOガイドラインを読む
      3. O’Reilly EM, Wainberg ZA, Hendifar AE, et al. Daraxonrasib or Chemotherapy in Previously Treated Metastatic Pancreatic Cancer (RASolute 302 最終解析). N Engl J Med. 2026;395(4):325-337. DOI:10.1056/NEJMoa2605555(オンライン先行公開 2026年5月31日)
        → 論文を読む(NEJM・最終解析)
      4. Ray K. Positive results for daraxonrasib for previously treated metastatic pancreatic cancer. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2026 Jun 12. DOI:10.1038/s41575-026-01222-8
      5. Sidaway P. Daraxonrasib effective in metastatic pancreatic ductal adenocarcinoma. Nat Rev Clin Oncol. 2026 Jun 12. DOI:10.1038/s41571-026-01176-5
      6. O’Reilly EM, Wolpin B, Pant S, et al. Daraxonrasib in Previously Treated Advanced RAS-Mutated Pancreatic Cancer(第I/II相). N Engl J Med. 2026;394(18):NEJMoa2505783.
        → 論文を読む(NEJM・第I/II相)
      7. Der CJ, Yeh JJ. Advances in RAS Therapeutics for Pancreatic Cancer. N Engl J Med. 2026;394(18):NEJMe2600517.
        → 論説を読む(NEJM)
      8. U.S. Food and Drug Administration. FDA Permits Expanded Access for Investigational Pancreatic Cancer Drug. May 1, 2026.
        → FDA公式発表を読む
      9. Revolution Medicines, Inc. Statement on FDA Expanded Access Authorization for Daraxonrasib. May 1, 2026.
        → Revolution Medicines公式発表を読む
      10. Revolution Medicines, Inc. Q1 2026 Financial Results and Corporate Progress. May 6, 2026.
        → NEJM掲載に関する発表を読む
      11. ClinicalTrials.gov. RASolute 302: A Study of Daraxonrasib in Previously Treated Metastatic Pancreatic Cancer. NCT06625320.
        → 臨床試験情報を見る(第III相)
      12. ClinicalTrials.gov. RMC-6236-001: First-in-Human Study of Daraxonrasib in Solid Tumors. NCT05379985.
        → 臨床試験情報を見る(第I/II相)

      【表記について】一般名は「ダラクソンラシブ(daraxonrasib)」です。「ダラキソンラシブ」と表記・検索されることがありますが、「ダラクソンラシブ」が正しい表記です。
      米国での販売名は「RASONQUE」で、日本語では「ラソンク」「ラゾンク」などと表記・検索されることがありますが、日本での販売名は決まっていません(2026年10月時点・日本国内未承認)。本記事では米国での販売名として英字表記を用いています。

      【免責事項】本記事は、2026年8月27日時点で公表されているFDA公式発表・査読論文・ESMO診療ガイドライン・Revolution Medicines社IR情報・主要医学メディア報道に基づいて作成しています。ダラクソンラシブは2026年8月26日に米国FDAで承認されましたが、日本国内では未承認であり、保険診療での使用はできません。本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の患者さまへの診療を行うものではありません。実際の治療方針は、必ず主治医または専門医にご相談ください。

      【監修】矢﨑雄一郎(プレシジョンクリニック東京院長/医療法人社団プレシジョンメディカルケア)

      【最終更新日】2026年10月8日



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