投稿日:2026.10.30/更新日:2026.10.30
2026年7月27日、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのRaghu Kalluri博士らが Nature Communications 誌に報告した論文は、膵臓癌(膵臓がん)の免疫治療で長く空白だった一点を埋めるものでした1。RAS阻害薬に免疫チェックポイント阻害薬を足す——発想としては誰もが思いつく組み合わせです。実際に試されてもきました。効かないことのほうが多かった。
この研究が示したのは、足す薬の種類と、足したあとに腫瘍の中で何が組み上がるかでした。
マウスの膵臓癌でRAS阻害薬に抗CTLA-4抗体を併用すると、腫瘍の中に新しいリンパ組織——三次リンパ様構造(TLS)が形成されます。そしてこのTLSを実験的に壊すと、延命効果はほぼ消えました。薬が効いていたのではなく、薬がつくった構造が効いていた、という結果です。
当院にとって無関係な話ではありません。理由は後半に書きます。
膵管腺癌(PDAC、膵臓癌の大多数を占める組織型)の約90%はKRAS遺伝子に変異を持ちます。KRASはRAS遺伝子ファミリーの一員で、長く「薬で狙えない標的」と呼ばれてきました。その状況は2021年以降に変わり、2026年8月にはpan-RAS阻害薬ダラクソンラシブ(ラソンク)が転移性膵臓癌に対して米国FDAの承認を受けています。国内は未承認です。経緯はダラクソンラシブの解説コラムとRAS変異がん専門外来のページにまとめています。
ただし、腫瘍は戻ってきます。
RAS阻害薬は多くの患者さまで腫瘍を縮小させますが、その効果は永続しません。縮んでいる期間を長く保つにはどうするか。この論文の出発点はそこにあります。著者らは、腫瘍が縮んでいる「窓」の時期に免疫治療を重ねる設計を検証しました。
使ったのはマウスの膵臓癌細胞KPC2(P48-Cre; LSL-KrasG12D/+; Trp53L/+ マウス由来)で、これを免疫が正常なマウスの膵臓そのものへ移植する正所性モデルです。皮下に腫瘍をつくるモデルと違い、膵臓癌に特有の線維性間質と免疫抑制環境がある程度保たれます。腫瘍が成立してから、RAS阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の投与が始まります。
RAS阻害薬は2剤を並行して検証しています。KRAS G12D変異を選択的に狙うMRTX1133と、活性型RASを広く狙うダラクソンラシブ(RMC-6236)です。作用の幅が違う2剤で同じ結論が出たことは、この研究の強みのひとつだと考えています。
著者らはRAS阻害薬に、使える免疫治療をひと通り足しています。抗PD-1抗体、抗Tim-3抗体、抗Lag-3抗体、抗Vista抗体、4-1BB作動性抗体。結果を先に書くと、相乗効果が出たのは抗CTLA-4抗体だけでした1。
これは地味な結果に見えて、実務的な含意が大きい所見です。免疫チェックポイント阻害薬は、臨床では抗PD-1抗体が主役です。使用経験も多く、副作用の管理法も確立されています。RAS阻害薬との併用を考えるとき、手に取りやすいのは抗PD-1抗体のほうでしょう。この論文のモデルでは、そちらではなかった。
著者らの説明は、疲弊したCD8陽性T細胞では別のチェックポイント分子が代わりに働いてしまい、PD-1だけを外しても埋め合わせが起きる、というものです。CTLA-4を外す操作だけが、別の層——制御性T細胞(Treg)の性質そのもの——に届いていました。
単一細胞のRNA解析とATAC解析を組み合わせた結果では、RAS阻害薬+抗CTLA-4抗体を受けたマウスの腫瘍内で、Tregがよりナイーブに近い状態へ戻っていました。AP-1系の転写因子(Fos、Fosb、Junb、Jund)の発現が下がり、IL-10をつくる遺伝子(Il10)とTGF-βをつくる遺伝子(Tgfb1)の発現とクロマチンの開き具合が低下します。論文の要旨はこの点を、IL-35のプロモーター領域でAP-1の活性が落ちたと表現しています1。
そしてCD8陽性T細胞の疲弊がやわらぎ、エフェクター型が増える。ここまでが前半の筋です。
組織を詳しく見た著者らが見つけたのが、TLSでした。
RAS阻害薬と抗CTLA-4抗体を併用した腫瘍では、リンパ球が集まった塊が増えています。ただ集まっているだけなら「リンパ球凝集」で、これはTLSとは呼びません。著者らはそこを区別するために、複数の染色を重ねました。CD19でB細胞、CD8でT細胞、CD31で新しく引き込まれた血管、そしてCD21とCD23で濾胞樹状細胞。単一細胞RNA解析でも、胚中心B細胞・形質細胞・インターフェロンで活性化したB細胞の遺伝子シグネチャー(Aicda、Bcl6、Igkc、Xbp1 など)の上昇を確認しています1。
T領域とB領域が分かれ、血管があり、濾胞樹状帯のネットワークがある。だからリンパ球凝集ではなくTLSである——これが著者らの論証です。
ここがこの論文の中心です。構造があることと、構造が効いていることは違います。前者は観察、後者は証明が要る。
著者らは2通りの方法でTLSを壊しました。ひとつは抗CD19抗体(クローン1D3)でB細胞を全身から除く方法。もうひとつはバミナーセプト(baminercept、リンパ毒素βレセプター-Ig融合タンパク質)でリンパ毒素βのシグナルを遮断する方法です。リンパ毒素βは、リンパ組織が組み上がるときの土台になるシグナルで、これを止めるとTLSの形成自体が進みません。
この2剤は、治療を強める薬として足されたのではありません。効果の仕組みを壊して確かめるための実験群です。ここを取り違えると論文の読み方が反対になるので、強調しておきます。
| 群(MRTX1133を用いた系列) | 匹数 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 対照(アイソタイプ抗体) | n=5 | 無治療に相当 |
| MRTX1133 単独 | n=5 | 一時的に縮むが最終的に死亡 |
| MRTX1133 + 抗CTLA-4抗体 | n=8 | 治療の本体。持続的な腫瘍制御 |
| 同上 + 抗CD19抗体 | n=4 | B細胞を除く検証群。効果が消失 |
| 同上 + バミナーセプト | n=8 | TLS形成を止める検証群。効果が消失 |
論文の記述は、B細胞除去とリンパ毒素β遮断が併用の生存利益を「反転させた(reversed)」というものです。残ったのはRAS阻害薬単剤に対するわずかな延長のみでした1。組織像でも、抗CTLA-4抗体を併用した群では正常な膵臓組織が比較的保たれていたのに対し、検証群では広範な腫瘍が再び占拠しています。
読み替えると、こうなります。RAS阻害薬と抗CTLA-4抗体が直接がん細胞を殺していたのではなく、両者が腫瘍の中にTLSという「前線の拠点」を立てさせ、その拠点が働いていた。拠点を潰せば薬は元の薬に戻る。
ここで混同されやすい2つを整理しておきます。腫瘍免疫の話では、長らく腫瘍所属リンパ節(TdLN)のほうが重視されてきました。TLSは比較的新しい概念です。両者は別のものですが、対立するものでもありません。
| 腫瘍所属リンパ節(TdLN) | 三次リンパ様構造(TLS) | |
|---|---|---|
| 成り立ち | 生まれつき存在する | 炎症に応じて後からつくられる |
| 場所 | 腫瘍から離れたリンパ節 | 腫瘍の中、腫瘍の縁、すぐ近くの間質 |
| 主な役割 | 最初の立ち上げ(プライミング)と、補充要員の備蓄 | 現場での再活性化と増幅、抗体産生 |
| 壊れたときに失われるもの | 腫瘍へ送り込む部隊の供給源 | 送り込んだ部隊を現場で立て直す仕組み |
TdLNについては、2021年に機序が明確になりました。Schenkelらは自然発生の肺腺癌モデルで、腫瘍内のTCF-1陽性CD8 T細胞が進行とともに機能不全に陥り数を減らすのに対し、所属リンパ節では同じ細胞が安定して保たれていることを示しています。そしてそのリンパ節内の備蓄を維持しているのがcDC1という樹状細胞で、cDC1が腫瘍の進行とともに減ることが抗腫瘍免疫の破綻に寄与していました2。Connollyらも独立に、所属リンパ節のT細胞が腫瘍内T細胞の前駆体であり、腫瘍内で幹細胞様の性質が保たれるにはリンパ節からの継続的な移入が必要だと報告しています3。
言い換えると、TdLNは訓練所で、TLSは前線基地です。
訓練所だけでは、送り出した兵が現地で押し潰されます。膵臓癌の腫瘍微小環境には、がん関連線維芽細胞、制御性T細胞、骨髄由来抑制細胞といった抑え込みの仕組みが幾重にも働いているからです。この構図は腫瘍微小環境(TME)という壁についてのコラムで詳しく書きました。逆に前線基地だけがあっても、そこへ送り込む部隊がいなければ機能しません。今回の論文は、前線基地の側を初めて実験的に「壊して」示した研究だと位置づけられます。
ここは患者さまからのご質問にもつながる部分です。TLSはできさえすればよいのか。答えは、そうではありません。
ヒトの検体を使った研究では、TLSの意義が「場所」と「成熟度」の2つで変わることが示されています。
場所について。膵臓癌では、腫瘍周囲の間質にあるTLSが生存と関連したという報告(ドイツ・ハイデルベルク大学の55例)4と、腫瘍内のTLSが全生存・無再発生存と関連したという報告(中国・重慶の65例+TCGA 143例)5があります。ただし前者は腫瘍内TLSを、後者は腫瘍周囲TLSを評価していません。同じコホートで腫瘍内と腫瘍周囲を直接比べ、意義の差を示した研究を私は把握していません。「腫瘍と空間的に結びついたTLSは予後と関連するが、腫瘍内と腫瘍周囲のどちらがより重要かは未解決」——ここが現時点で正確な言い方です。
成熟度について。こちらは根拠がより明確です。Vanherseckeらは複数のがん種の検体を解析し、胚中心を持つ「成熟した」TLSの有無が、免疫チェックポイント阻害薬の効果と関連すること、しかもその関連がPD-L1発現とは独立していることを報告しました6。つまり、リンパ球が集まっているだけの塊と、胚中心やCD23陽性の濾胞樹状細胞まで備えた構造とでは、意味が違います。
この物差しを今回の論文に当ててみると、注意すべき点が見えてきます。著者ら自身が、このモデルで観察されたTLSは成熟度にばらつきがあり、完全に成熟しているわけではないと書いています1。さらに染色に使われたのはCD21・CD23・CD31・CD19・CD8で、高内皮細静脈の指標であるPNAd(MECA-79)や、TLS誘導に関わるケモカインCXCL13は検証されていません。「成熟TLSが誘導された」と要約するのは、原著より一歩踏み込みすぎだと考えています。
TLSをどう作るかという研究も進んでいます。2025年には、IL-33で活性化した2型自然リンパ球(ILC2)が膵臓癌でTLS形成を引き起こすことが報告されました7。今回の論文はRAS阻害薬と抗CTLA-4抗体という経路から、こちらはサイトカインと自然リンパ球という経路から、同じ構造に到達しています。
この考え方は、今回の論文が示したTLSの話と正面からつながります。
所属リンパ節は、腫瘍へ送り込む部隊を養っている苗床です。ここを照射野に含めれば供給源が細る。一方、腫瘍の中にTLSが立っていなければ、送り込んだ部隊は現場で立て直せない。片方だけを守っても足りない、という構図が見えてきます。
変異の「型」を確認する工程は、RAS阻害薬の適応を考えるためだけのものではありません。変異したRASタンパク質そのものが、免疫の標的(ネオアンチゲン)になりうるからです。この考え方はプレシジョンメディシンのページと樹状細胞ワクチン療法のページに書いています。
当院が歩んできた道筋も、この論文と重なるところがあります。樹状細胞ワクチン療法単独では届かない場面に繰り返し直面し、がん側——つまり腫瘍微小環境——に向き合うようになった。免疫側とがん側の両輪が揃わないと進行がんの免疫療法は完結しない、というのが当グループの立場です。今回の論文が示したのは、その「両輪」のうち、がん側を動かすと免疫側に新しい構造が立つ、という接点でした。
当院は膵臓癌ステージ4の治療設計において、標準治療を土台としたうえで、免疫を活性化する〈アクセル〉としての樹状細胞ワクチン療法、〈ブレーキ解除〉としての免疫チェックポイント阻害薬、〈スイッチ〉としての局所療法を組み合わせる独自プロトコルSynerTri®(シナトリ/学術名 iCCI)で治療を設計しています。今回の知見は、〈ブレーキ解除〉にどの抗体を選ぶかという議論に、ひとつの材料を加えるものだと考えています。低用量の抗CTLA-4抗体とRAS経路阻害の併用は、当グループが重要なテーマとして位置づけている組み合わせです。ヒトでの検証はこれからで、本記事はその根拠となる前臨床研究の一つです。
ただし、はっきり書いておきます。この論文はマウスの研究です。当院の治療成績を裏づけるデータではありませんし、当院の設計が他の設計より優れていることを示す比較試験も存在しません。重なっているのは考え方の方向であって、効果ではありません。
この論文を読むうえで、距離を見誤らないために書いておくべき点がいくつかあります。
第一に、これはヒトの治療プロトコルではありません。使われた抗CTLA-4抗体はマウス用のクローン9H10で、臨床で使われるイピリムマブと薬理学的に同一ではありません。マウスのμg単位の投与量をヒトのmg単位へ直接換算することもできません。この論文から特定のヒト用量を正当化することはできない、ということです。
第二に、著者自身の記述がデータより一歩前に出ている箇所があります。プレプリント段階の考察で、著者らはこの結果を臨床でのイピリムマブ併用の「説得力ある根拠(compelling evidence)」と表現しています。しかし本研究でイピリムマブは一度も試験されていません。実測はマウスのクローン9H10です。開発側の期待と実測の距離は、読む側で補正する必要があります。
第三に、群のサイズが小さいことです。Figure 7の各群は4〜8匹です。とくに抗CD19抗体を加えた群はn=4で、生存曲線の差を論じる統計的な検出力は乏しい。方向性は一貫していますが、「TLSが必須であることが証明された」と書くのは言い過ぎで、「TLSを壊すと効果が失われるという一貫した所見が得られた」が妥当な表現です。また、この研究が示したのは観察期間内の持続的な腫瘍制御であって、治癒ではありません。
第四に、壊す実験そのものの限界です。抗CD19抗体はB細胞を全身から除くため、「TLSが消えたこと」と「B細胞の抗原提示・抗体産生の機能が消えたこと」を完全には分けられません。バミナーセプトもリンパ毒素βのシグナルを広く止めるため、TLS以外の間質・血管・リンパ組織への影響が混じります。
第五に、分子レベルの記述にも読み替えが必要です。著者らはIL-35の抑制を結論に含めていますが、実際に測定されているのはサブユニットの一方である Ebi3 です。IL-35はEbi3とp35(Il12a)のヘテロ二量体なので、片方の低下からIL-35全体の抑制を結論づけるには隔たりがあります。またATAC解析はクロマチンの開き具合の相関を見るもので、因果としての「エピジェネティックな抑制」の証明ではありません。著者らは形質細胞の集団がダラクソンラシブ投与群で捕捉できていないことも、技術的限界として自ら記載しています1。
第六に、今回の検証で確認しきれなかった点です。本稿の執筆にあたり、出版社サイトの本文(Methods・考察の全文)には到達できませんでした。薬剤の用量・溶媒・投与スケジュールはプレプリント版のMethodsに基づく記載です。なおそのプレプリント版には、抗CTLA-4抗体の投与量をめぐって算術的に成立しない記載があります(初回200μg、最終液量100μL、濃度1mg/mLの3つが併記されており、100μL×1mg/mL=100μgで計算が合いません)。最終版で修正されているかどうかは確認できていません。また、生存期間の中央値やp値といった具体的な数値も、今回確認できた範囲には含まれていませんでした。本稿で数値を断定していないのはこのためです。
最後に、樹状細胞ワクチン療法と放射線治療は、この研究では検討されていません。
以下は論文が示した事実ではなく、私(矢﨑)が機序から立てた仮説として読んでください。
この研究が直接支持している設計は、RAS阻害薬を継続しながら、治療の初期に限って抗CTLA-4による介入を加えるという考え方です。マウスでは両者がほぼ同時に始まり、抗CTLA-4抗体は最初の1週間に3回投与されただけで、RAS阻害薬のほうは継続されました。免疫を動かす操作は短く、環境を変える操作は長く——この非対称が設計の核だと私は読んでいます。
そのうえで、樹状細胞ワクチン療法と局所療法を加えたらどうなるか。樹状細胞ワクチン療法は所属リンパ節での最初の立ち上げを強める治療です。局所療法は抗原を放出させる操作にあたります。RAS阻害薬と抗CTLA-4抗体が腫瘍内にTLSという受け皿をつくるのなら、訓練所と前線基地の両方を同時に押し上げられる可能性がある。私がいま最も関心を持っているのは、この一連の循環です。
ただし、この4者を直接検証した臨床試験は存在しません。機序に基づく仮説として扱うべき段階です。
研究として追いかけるなら、評価の項目も変わると考えています。従来のCD8とFOXP3の評価に加えて、CD20/CD19、CD21、CD23、胚中心のマーカー、PNAd(MECA-79)、CXCL13、形質細胞を組み合わせ、TLSの有無だけでなく成熟度まで見る設計です。当院で行っている腫瘍微小環境(TME)の解析にこの視点を組み込めないか、検討しているところです。
この組み合わせとしては受けられません。ダラクソンラシブは2026年8月に米国FDAの承認を受けましたが、国内は未承認です。イピリムマブ(抗CTLA-4抗体)は国内でも承認されていますが、膵臓癌は承認された適応に含まれていません。そして今回の論文はマウスの研究であり、ヒトでこの併用を検証した臨床試験の結果は公表されていません。
この研究では治療薬として使われていません。どちらも、三次リンパ様構造(TLS)が効果の本体かどうかを確かめるために、わざとその仕組みを壊す目的で投与された実験群です。図の中にこれらの薬剤名を見つけても、治療を強める薬と読まないでください。
手術や生検で採取された組織があれば、病理学的に評価することは技術的に可能です。CD20やCD23などの染色を追加して、リンパ球の集まりの構造と成熟度を見ます。ただし、これは研究として確立された評価であって、TLSの有無で治療方針を決めるという使い方が標準診療として確立しているわけではありません。
この論文のこのモデルでは、RAS阻害薬との相乗効果が出ませんでした。抗PD-1抗体そのものの価値を否定する結果ではありません。がん種や併用する薬によって主役が入れ替わることは、免疫治療の研究では繰り返し観察されています。マウス1系統の結果を、ヒトの全がん種に広げて読まないほうがよいと考えています。
一般論としてお答えできる問題ではありません。転移のない所属リンパ節を温存する考え方には、複数の独立した報告による機序の裏づけがあります。一方、転移が成立したリンパ節をどう扱うかについては、免疫療法を併用する時代の答えを出した無作為化比較試験を私は把握していません。手術や放射線治療の適応は、治療の目的と病期によって決まります。担当の先生とご相談ください。
監修医師
矢﨑 雄一郎医師
免疫療法・研究開発
東海大学医学部を卒業後、消化器外科医として医療機関に従事したのち、東京大学医科学研究所で免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)の開発に従事。現在はプレシジョンメディカルケア理事長として活躍中。専門分野は免疫療法及び消化器外科。著書『免疫力をあなどるな!』をはじめ、医学書の執筆も手がけ、医療知識の普及にも貢献。免疫療法の開発企業であるテラ株式会社の創業者。